人が死んだ後に残されたブログなどのその後を雑誌記者がまとめた本「故人サイト」が出版され、ネット上で反響を集めている。
著書の古田雄介さんは、葬儀業スタッフの経験もある異色の記者だ。利用者が亡くなった後のデジタルコンテンツの追跡調査をライフワークに掲げており、新聞社サイトで「死後のインターネット」も連載している。
「ブログやツイッターは、管理がいるお墓と同じ」
今回は、古田さんが集めた4ケタにも上る膨大な「死者サイト」コレクションから、103サイトを選りすぐって紹介した。2015年12月11日に社会評論社から出版されたばかりだ。
古田さんは著書で、利用者が亡くなった後のブログやツイッターは、お墓と同じだと指摘する。
例えば、08年12月に亡くなったタレントの飯島愛さんのアメーバブログだ。15年10月で閉鎖されるまでの7年間で7万件超のコメントが書き込まれたが、それを支えたのがファンや飯島さんの家族、そしてブログ運営者だった。
お墓は、放っておけば、雑草などが生えて荒れてしまう。ブログも、スパムなどで同様の事態になる恐れがあるが、飯島さんの場合は、最後まで大きく荒れることなく、ネットのモニュメントであり続けた。
ファッション誌「小悪魔ageha」のモデルで09年6月に21歳の若さで脳出血のため亡くなった純恋(すみれ)さんのケースも同じだ。ブログへのファンからのコメントは、これまでに3万件にも達しており、ファンや本人の意向を組んだ事務所が、純恋さんの死後も、ライフワークのボランティアプロジェクトやデザインしたアクセサリーの販売を続けていた。
一方、一般の人たちにとっては、「お墓」の管理はそんなにうまくはいかない。
例えば、14年10月にバイクを運転中に事故死した男子高校生のケースだ。
ツイートから証拠なく「飲酒運転」と叩かれる
この男子高校生は生前、ツイッター上で飲酒や喫煙とみられる画像を度々アップしており、事故死が報じられると、ツイッターが荒れ始めた。「日頃の行いが悪くて死んだ」「お間抜け」などとバッシングが相次ぐ騒ぎになったのだ。
さらに、飲酒運転した証拠もないのに、ネット上では飲酒と事故が結び付けられる事態にもなった。高校生の友人らが反論したが、ツイッターの炎上を止めることはできなかった。
もし高校生の家族がツイッターアカウントのパスワードを知っていれば、反論もできたかもしれない。まだ若いだけに、死後の「デジタル遺品」については考えておらず、家族も高校生が死ぬことに備えていなかったために、お墓が荒れるのを止められなかったようだ。
「故人サイト」について、「週刊読書人」編集長の明石健五さんが12月16日にツイッターで「すごい本を作ったなあ」とつぶやくと、2500以上もリツイートされる反響を呼んだ。ネット上では、「電子情報にも遺品整理という概念が必要な時代なのかなぁ」といった感想が次々に上がっている。
この本を担当した社会評論社の編集者は、次のように話す。
「一般の人なら、昔は私的な手紙しか後に残らなかったのに、ネット社会では、書き込んだデジタルメッセージが半永久的に漂ってしまいます。気を付けてその対策を考えないといけない時代になっており、この本を読めば自分や家族が亡くなったときのことを考えさせられるのではないでしょうか」