2015年もいよいよ暮れようとしている。今月仕事で大忙しだった木村清志さん(仮名、以下キヨシさん)にも、1週間ほどの年末年始休暇が訪れた。
お正月はおせち料理を食べてのんびりしようと楽しみにしている様子だが、油断するとこれまで3か月間積み上げてきたダイエットの努力が水の泡になりかねない。例年の正月の食生活を聞き出し、管理栄養士にアドバイスを求めることにした。
年越しにそばとステーキ、おせちは数の子を皿に山盛り
9月にスタートしたダイエットで、これまで体重6キロ減。長年の「朝食抜き」を改善し、なかなか身につかなかった運動習慣も、業務中のデスクワーク時間を活用した「仕事中ダイエット」に取り組み始めた。そんな中で初めての長期休暇。過ごし方によっては、年明けの体重に影響を及ぼすかもしれない。しかも16年1月には、健康診断が控えている。
多忙続きだったキヨシさんにとって、年末年始の休みは待ちに待ったリラックスタイム。実家を訪れて、家族と共においしい料理を食べるのが毎年恒例だ。
編集部「おせち料理の中で、好きなものは何ですか」
キヨシさん「何といっても数の子。重箱に入っている分では足りないので、私だけ皿に山盛り用意してもらうんですよ」
編集部「豪快過ぎますね。お雑煮はどうですか」
キヨシさん「もち1個入れて2杯ほど食べます。でも、元日だけですね。1月2日以降は比較的いつもの食事メニューですよ。子どもが食べたがるのでハンバーグとか。あ、そういえば大みそかの年越しも、ウチは凄いんです」
編集部「へえ、どんなお食事を」
キヨシさん「実家で過ごすのですが、まず夕方に年越しそばが出てきます。平らげてしばらくすると、今度は夕食にサイコロステーキが登場。さらに新年を迎える時間には、また軽食をいただくんですよ」
編集部「これは、いくら何でも食べきれないでしょう」
キヨシさん「ところが、これがペロリと食べちゃうんだなあ」
男・キヨシはスケールが違う。だが今はダイエット継続中の身。去年と同じように過ごして大丈夫だろうか。少々心配になってきた。
年越しそばは意外と危険
まず気になるのが、数の子の大量食いだ。1日どの程度が適量なのか。
管理栄養士は「カロリーは1本30キロカロリー程度と低めですが、塩分が1.5グラムと高め」と指摘する。そのため、1日2、3本に抑えたい。味付けは、だしをきかせてできるだけ薄めにする。
もし食べ過ぎて塩分を過剰摂取したら、考えられるリスクとして、管理栄養士は高血圧に加えてダイエット上の懸念もあると話す。「体がむくんで血流が悪化、細胞に栄養がいきわたらなくなって代謝が下がり太りやすくなるのです」。コレステロールも含まれている。鶏卵やイクラと比べると少ないが、やはり食べ過ぎは避けたい。
栄養面では、数の子はタンパク質が豊富だ。タンパク質は毎食「片手手のひら1杯分」の摂取が目安となる。おせちの中の数の子やブリ、サケ、エビ、田作りといった料理を食べる際はこの点に気を配りたい。またおせち料理は野菜が不足しがちなので、なますや菊花かぶも積極的に食べてほしいという。
大みそかの「年越し大食い」はどうだろう。管理栄養士は「意外」な回答だった。
「せっかくご実家で出されるごちそうですから、この時は見逃してもよいかもしれません。時には例外を認めることも、ダイエットが成功するコツでもあります」
実は最悪なのが、張り切ってダイエットして減量しても、苦しくて長続きせずリバウンド、反省してまた挑戦するが挫折して失敗、という悪循環に陥ることだ。リバウンドを繰り返すと筋肉減少や代謝の低下を招き、太りやすくなってしまうという。
とはいえ、先々のことを考えると可能な限り悪影響を及ぼす行為は避けたい。そこで、食べ方のポイントを聞いた。
注意したいのは、そばだ。食品ごとの血糖値の上がり方を示した「GI値」では、そばは低い。ヘルシーなイメージを持つ人もいるだろう。だが、そばだけを一度に大量に食べると血糖値を急上昇させる要因になるという。そこで「ざるそば、もりそばではなく、月見そばなど具を増やすのがお勧めです」。ざる、もりにする場合は、単品で食べずに豆腐やサラダといったおかずを一緒に食べるとよい。
夜中の食事は「水分が多く暖かいもの」
ステーキは、サーロインよりも肩ロースやモモ肉を選ぶとカロリーを抑えられる。食べる際は極力脂身を避け、網焼きして油を落とす。またここでも肉だけではなく、こんにゃくや高野豆腐を一緒にステーキにして一緒に食べれば、肉が少なめでも満足感が得られるだろうというのが、管理栄養士の助言だ。もちろん、最初に野菜から食べ始めるのを忘れてはならない。
夜中に食事をする場合は、胃腸への負担が少ない野菜スープやみそ汁が望ましい。「どうしてもご飯を」というなら、雑炊や出汁茶漬けなど水分が多く、暖かくしたものを選ぶ。
正月は全般的に、おせち料理をはじめ味が濃いものを食べがちだ。かえって食欲が増し、ご飯の量が増えてしまう。薄味を基本として、レモンや酢、ごま、唐辛子といった酸味や香味を活用するとよいそうだ。もちや黒豆、栗きんとんと糖分を含む料理も多いので、「低GI食品を選んでください」。
キヨシさん、こうしたアドバイスを受けて正月太りを回避できるだろうか。年明けに話を聞くのが楽しみのような、不安のような...。