分譲マンションの建物を適切に維持するための大規模修繕に備え、入居者が月々支払っている「修繕積立金」が不足し、予定通りの修繕ができないケースが、2015年にかけて全国に広がっているという。
施工費用の高騰などが背景とされるが、マンションを販売する側の売り方にも問題があるとの指摘が強い。
管理組合の新たな借金も急増
マンションは年月がたてば、給水管や配管のほか、壁や屋上も傷む。住環境を良好な状態に維持し、資産価値を落とさないためには、定期的に修繕を行わなければならない。しかし、多数の世帯が住み、建物の規模も大きいことから、修繕工事の費用は億単位に上ることも多く、その都度、一括徴収することは難しい。このため分譲マンションは、長期の修繕計画を作り、これに基づいて月々の積立金の額を決め、各世帯が支払っているのが一般的だ。
しかし、この2年ほどで積立金不足が問題になる例が全国で相次いでいるという。積立金不足への対応のため、借金までする管理組合も増えているのだそうだ。実際、住宅金融支援機構によると、管理組合向けの大規模修繕用融資の件数は2011年度に178件だったのが、2014年度は278件と1.5倍に増えた。1戸当たりの平均融資額も2011年度の46万円が、2014年度は53万円へと約15%も膨らんでいる。2015年も同じ傾向と見られる。
積立金不足の大きな要因の一つは、施工費用が高騰していることだ。「修繕工事の見積もり額は2013年ごろと比べて約4割上昇している」(東京都内のマンション管理コンサルタント)とされる。東日本大震災の復興工事や2020年の東京五輪に向けて工事需要は急速に高まっており、資材や人権費が急騰しているためだ。
「分譲時に物件を安く見せたい」と野放し状態
ただ、マンション管理の専門家らによれば、根深い問題は分譲マンションを販売する側の姿勢だという。マンションの入居者はマンションの本体価格に加え、月々管理費と修繕積立金を支払う。管理費は当初から一定額が必ず必要だが、修繕積立金なら低く提示しても当面は大きな問題とならない。このため、販売会社は少しでも買いやすく見せるよう、修繕積立金を低く設定するケースが少なくないという。
ある不動産コンサルタントは「分譲時に物件を安く見せたいという販売サイドの責任は大きいが、修繕積立金の設定などに関する規制はなく、『野放し状態』というのが実態だ」と問題を指摘する。
分譲マンションの購入者は最終的に、自分の資産を自分で守るしかない少なくとも、修繕積立金が安いという目先の魅力に飛びつかず、修繕計画がどうなっているかを確認し、積立金が妥当か、購入前のチェックが不可欠だ。