認知症を引き起こすアルツハイマー病は、治療法がなく、人間だけがかかる病気と思われてきた。ところが、高齢のネコも人間とまったく同じメカニズムで発症することが、東京大と京都府立医科大、大阪市立大、麻布大の合同チームの研究でわかり、2015年12月、国際神経病理学誌「ANC」に発表した。
ネコ好きにとっては、うれしいような悲しいような研究である。
哺乳類には「老人斑」できるが...
アルツハイマー病は、3つの段階をへて発症する。(1)脳の神経細胞の外側に「アミロイドベータ」というタンパク質が凝集し、「老人斑」ができる。(2)さらに神経細胞の内側に「タウ」と呼ばれるタンパク質が集まり、異常な糸くず状の繊維がたまる「神経原線維変化」が起こる。(3)最後に、記憶をつかさどる「海馬」の神経細胞がどんどん脱落し、「海馬」が萎縮する。こうして認知症に至る。
これまで、イヌやサルなどほかの哺乳類では、高齢になると「老人斑」ができるが、「神経原線維変化」や「海馬」の神経細胞の脱落までは確認されていない。遺伝子操作のマウスも同様で、人間以外にアルツハイマーの発症を再現する動物がいないことが、治療法の発見を難しくしていた。