レオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタイン......。天才たちの知性はどうやって生まれるのか。環境か遺伝か。やはり生まれつきの「天才になる遺伝子」があるのだろうか。この謎を解き明かす研究を、英ロンドン大学キングス・カレッジのチームがまとめて、2015年12月、英の精神医学会誌に発表した。
従来の研究では、「卓越した知性」と「通常の知性」の間では脳の大きさなどには変わりがないことがわかっている。そこで、研究チームは、ゲノム(染色体のDNAの全遺伝情報)の中に天才特有の遺伝子があるのか、ないのかを突きとめるために、「IQ170以上」の1409人のゲノムと、「普通のIQ」の3253人のゲノムとを比較した。「IQ170以上」は全人口の0.03%、1万人に3人という限られた頭脳の人たちだ。ノーベル賞受賞者の平均IQは「145」といわれる。
その結果わかったのは、「天才の遺伝子」は存在しないということだ。高度な知性をもつ人々と、普通の人々との間のあらゆる遺伝情報の差を調べたが、すべて個人差の範囲内で、特別に共通な遺伝子は見つからなかったという。
研究チームのティモシー・スペクター博士は「これまで不幸なことに、知性については生まれつきの遺伝が影響して、運命はさけられないと考えられてきましたが、環境が大事であることがわかりました」と語っている。