税制改正大綱において、軽減税率の対象として定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞が含まれた。新聞業界がかねてより要求していた軽減税率の対象になったのだ。要求の根拠とされていたのは、新聞は報道・言論によって民主主義を支えるとともに、国民に知識、教養を広く伝える役割を果たしているというものだ。
先日(2015年12月)20日の朝日新聞の「官と民 『見える手』にすがる産業界」というコラムで、面白いことが書いてあった。経団連が法人税などを要求していたとし、「頼んだら頼まれるのは道理である」というのだ。これは、軽減税率を要求していた新聞にもあてはまる。政権批判をしないことや、政権ヨイショを頼まれるのだ。
消費再増税を再びスキップする可能性
新聞は、やせ我慢をしても、軽減税率を受けるべきではなかった。生鮮食品、加工食品まではわかる。酒と外食を除くのもわかる。しかし、それに飛び地のように、電気・ガス・水道を差し置いて、新聞が軽減税率の対象というのはあまりにおかしい。これから、いろいろな記事を書いても、先の朝日新聞コラムのように冷やかされてしまう。
実のところ、今回の軽減措置の騒動を見ていると、どうやら、その前提である2017年4月からの消費再増税そのものも怪しくなっている。消費再増税を推す財務省は、今回官邸に完敗したが、来16年7月の参院選前に、消費再増税を再びスキップすることを決める可能性が強くなっている。
これまで、安倍首相はリーマンショックのようなことがなければ消費再増税すると言ってきたが、軽減税率が決着した12月14日の都内講演で、国民の理解がないと消費再増税はできない、と微妙に言い方を変えた(「国民的な納得が得られるものでなければ、経済に大きなブレーキがかかる可能性もある」)。
しかも、軽減税率の対象かどうかについて加工食品と外食の間に線引きをしなければいけないが、万人を納得させるものを、あと半年で作るのはかなり難しい。
であれば、来年7月の参院選(衆院選とのダブルの可能性もある)で、「国民の理解」を得るのは至難のわざともいえる。と考えれば、消費再増税自体もスキップする公算が高まっているといわざるを得ない。
このような動きについて、軽減税率の対象になる新聞は、自らに不利益になるので、どこまで報道できるのだろうか。