夫婦双方の「姓を並立」や「新姓創出」の案も
ユニークな意見としては、評論家の宮崎哲弥氏がかつて唱えた案がある。夫婦の姓を並列させる「結合姓」や夫婦双方の姓以外の「新姓創出」も認めることを条件に、選択的夫婦別姓制度を導入してもよいと、2008年12月8日放送の「たかじんTV非常事態宣言」(読売テレビ)の中で発言していた。夫婦どちらかの姓だけでなく、双方の姓を名乗る、または第三の選択肢を与える手法だ。
作家の古市憲寿氏は、
「離婚率が高い日本では、子どもの姓が親の姓と変わるのは珍しくない」
として、子どもの名前に関して混乱が生じるとは思えない旨を、2015年11月8日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で述べた。厚生労働省が2015年1月1日に発表した「人口動態統計の年間推計」によると、年間約22万2000組が離婚している。全ての夫婦に子どもがいるわけではないが、相当数の子どもが離婚により親と姓を異にする経験をしているともいえる。
コラムニストのオバタカズユキ氏は、選択的夫婦別姓制度の導入は、
「親子や兄弟姉妹全員が同姓でなくても構わない、という考え方の普及活動でもあり、別姓を異常視しない常識づくりである」
とし、「別姓・同姓家族の共存を国としてめざそうというものだ」との考えを2015年12月19日のNEWSポストセブンで述べている。
実態としても、2015年11月27日付の朝日新聞デジタルでは、兄弟で名字が違う小学生を取り上げ、「離婚したのかと聞かれたが気にしなかった。いつの間にか『母が自分の姓を大事にしていて、自分にも付けた』と説明するようになっていた」という。12月20日付の朝日新聞デジタルでは、ペーパー離婚により別姓夫婦の子となった20歳の男性を紹介した。「ここ10年、友だちから親の姓を聞かれたことはなく、それでいじめられたこともない。親が別姓だと子どもがかわいそうと考える人もいるが、自分は幸せに育った」という。
日本以外では、例えば、韓国では夫婦別性が基本で、生まれた子どもは父親の姓を名乗るとされている。ただ今回の判決では、「別姓を認める諸外国でも、子どもの姓をどうするかについては意見が分かれている」とし、「こうしたことまで考慮に入れて判断するのは司法審査の限界をはるかに超える」と判断を避けた。そして、姓の問題は社会生活への見方を問うものだとして、「むしろ国民的議論、民主主義的なプロセスで幅広く検討していくことがふさわしい解決だと思える」と、国会をはじめとした裁判以外の場での議論を促した。