「子どもは家裁の許可により姓を変更できる」とする民法改正案
「子どもの姓」については、今回の判決でも、寺田逸郎裁判長が補足意見として、「民法上の家族は、夫婦とその間に生まれた子どもが基本をなしている」ことを前提に、「子どもは夫婦と同じ姓を持つ存在として意義づけられている」と述べた。そして、こうした「現在の家族制度は社会の多数に受け入れられており、その合理性を疑う余地があるとは思えない」と、社会の実態に合わせる判断を下した。
憲法学会理事で日本大学法学部教授の百地章氏は、夫婦が別の姓を名乗ることで
「子どもも夫婦のどちらかと必然的に姓が異なることになり、不安を抱いたり、いじめを受けたりという弊害が生じる可能性もある。別姓を選ぶ夫婦は、『我が家は大丈夫』と思うかもしれないが、姓を選べない子どもへの配慮が欠けているのではないか」
と12月17日付の読売新聞のインタビューに答え、「子どもへの視点」を重要視した。
1996年に法制審議会が答申した民法改正案では、選択的夫婦別姓制度の導入が提言されており、
「夫婦が婚姻する際に、子どもが名乗る姓を決めておく」
「子どもが複数いるときは子ども全員同じ姓を名乗る」
という考えを示している。これを採用すれば、少なくとも夫婦間では、子どもの姓が問題になることは少なくなりそうだ。また、この改正案では
「別姓の夫婦の子どもは、成人すれば家庭裁判所の許可により父または母の姓に変更できる」
と、子ども自身が自己の姓を選ぶ権利も残している。しかし、法務省の説明では「国民各層にさまざまな意見がある」ことなどから、2015年12月まで当該改正案を国会提出するには至っていない。
民主党も2015年6月、夫婦別姓導入を前提に「子どもの姓は出生の際に夫婦の協議で決める」とする民法改正案を作成し、共産党、社民党などと共同で国会に提出したが、法案は審議入りせず、廃案となった。