最近、怒りっぽくなった。ささいなことが気になり、夜も眠れない。起きると「朝立ち」がなくて久しい。仕事中も「え~と、アレ、アレ」と名前が出てこない。――それは、40歳代以降の男性に増えている「オトコの更年期」かも。
男性ホルモンのテストテスロンが加齢とともに減るのが原因だ。放っておくと、うつや糖尿病、認知症に進行する恐れがある。予防や改善をするには、テストステロンを増やすのが一番だ。
原料のコレステロールはたっぷりあるのに
では、テストステロンを増やすにはどうしたらよいか。実は、テストステロンの原料はコレステロールだ。40~50歳代の男性なら体内にたっぷりあるはずだが、それを作る精巣をはじめ、体内に分泌する役割を果たす細胞や酵素などの生産ラインが錆びついてしまうのだ。そこで、生産ラインを活性化させ、テストステロンをどんどん分泌させる栄養豊富な食べ物を紹介しよう。
(1)タマネギ:もともと血液をサラサラにし、血圧を下げる健康効果があるが、最近、タマネギに含まれるアミノ酸「アリイン」に、テストステロンを作る働きがあることがわかった。老齢マウスにタマネギエキスを与えた実験では、分泌量が3.2倍に増え、精巣の働きが若者マウス並みに回復した。
古代エジプトの壁画にタマネギの絵が描かれ、ピラミッド建設の労働者に食べさせた記録があるほど精力がつく。1日に1個の半分は摂(と)りたい。レンジで加熱した後にミキサーでジュースにして、いったん冷凍庫で保存する「氷タマネギ」がオススメ。スープやサラダ、鍋に入れるなど様々な料理に使える。
ネバネバヌルヌルの成分にパワーの源が
(2)ネバネバヌルヌル食品:長イモは、糖分分解酵素のアミラーゼや消化酵素のカタラーズが豊富で、糖をすばやくエネルギーに変えて代謝を早める。スタミナ食といわれる由縁だ。モロヘイヤは、非常に栄養が豊富で、独特のぬめり成分の中にホウレンソウの5倍のカルシウム、2倍のベータカロテンやビタミンB群がある。また、ポリフェノールの1種のケルセチンに肝臓の脂肪燃焼を助ける効果がある。高脂血症のマウスにモロヘイヤを与えた実験では、中性脂肪が減り、体重が減る結果が出た。茎にも栄養があるので、細かく刻んで全部みそ汁に入れたい。
オクラのネバネバ成分の中には、血液を作り、細胞を再生させる葉酸が含まれている。ベクチンやムチンなどの食物繊維がコレステロールを減らし、腸内細菌のバランスを良くする。海藻類のワカメやコンブに含まれる色素フコキサンチンや食物繊維フコイダンは、がん細胞の増殖を抑える。同じくネバネバの納豆にも様々なパワーがあるので、一緒に和えて食べると鬼に金棒だ。
玄米に含まれる「万能の栄養素」
(3)玄米:白米の6倍の食物繊維を含むほか、ビタミンB1、リン、カリウム、亜鉛など「穀物の王様」といわれるほど栄養素を含んでいる。特にGABA(ギャバ)というアミノ酸は、脳の血流を良くしてストレスを緩和させたり、中性脂肪を減らして血圧を下げたり、肝臓や腎臓の働きを良くしたり、不眠を解消したりと、「万能の栄養素」として、最近、注目されている。玄米に抵抗があるのなら、白米に2~3割混ぜるだけでも効果が上がる。また、市販の雑穀ブレンドを利用すれば、手軽に炊飯器で炊ける。
(4)赤身の牛肉:牛肉や卵、鶏肉、豚肉などのタンパク質を多く含む食事は、テストステロン値を高めるために必須だ。ただし、脂肪の少ないモモ肉やヒレ肉にしたり、肉の代わりに魚や大豆を食べたりするなど、脂質の摂り過ぎに注意したい。
(5)カキ:カキに豊富に含まれる亜鉛は、米国で「セックスミネラル」といわれるほどパワーの源だが、直接テストステロンを作る役割はない。しかし、精液の材料になり、精巣の働きを活発化する。亜鉛は、牛ヒレ肉、豚レバー、チーズ、卵などにも含まれる。季節によってカキが手に入らない時は、「チーズハンバーグ」を食べると、亜鉛を効率的にとることができる。
(6)アスパラガス:フランス語で「男性器」の隠語を意味するほどセクシーな野菜だ。アスパラガスに含まれる葉酸とビタミンB6は性的興奮を高める。また、ビタミンB6はテストテスロンの分泌を促す。
(7)サンマ・マグロ:テストテスロンの生成に欠かせないのが、ビタミンEと、ビタミンB群の1つのナイアシン。2つの栄養素を両方含むのがサンマ、マグロ、サーモン、ウナギなどの魚だ。ビタミンEは、ビタミンCと一緒に摂ると抗酸化作用がアップして効果が高まる。添えてある大根おろしを残さずに食べたい。