大阪市内の商業施設にあるゲームセンターのUFOキャッチャーで人気菓子「うまい棒」(1本約10円)を大量入手したのに、なぜか店舗に「半分」取り上げられた。あるツイッターユーザーのそんな報告が今、ネット上を騒がせている。
「店側が悪い」「もらえないとおかしい」と店舗を「バッシング」する動きも出ているが、すべてのきっかけはユーザーが投稿した「うまい棒なだれ動画」だった。
クレーンが引き返した後に起きた「異変」
2015年12月21日、30秒足らずのUFOキャッチャープレー動画がツイッターに投稿された(元動画はすでに削除)。動画を見る限り、ケース内のうまい棒はタワーのように積み重ねられ、今にも崩れ落ちそうだ。
動画に登場するのは投稿主の友人と思われる女性2人。「どの辺いってもいいよな?」「手前やろ、ここら辺」「ストップって言ってな」と会話しながら、うまい棒の山にクレーンを突っ込ませる。結局一本もすくい取れず、クレーンは元の場所へ引き返すのだが、その直後に「異変」が起こる。
クレーンの重みや、かすかな位置の移動でバランスを崩したうまい棒の山が景品取り出し口めがけて一気になだれこんだのだ。数えきれない量のうまい棒が取り出し口に溜まり、ケースの外から見えている。「えーやばいやばいやばい!うわーっ!」――この状況に驚いた女性2人の笑い声と絶叫が響き渡る中、動画は終わる。
うまい棒の山が一気に崩れ落ちる視覚的なインパクトから、動画はまたたく間に拡散され、その日の内に各種まとめサイト、YouTubeへ転載された。動画を載せた元ツイートも6万回以上リツイートされた。あまりの影響力に動揺したためか、投稿主はすでに自らのアカウントを削除している。
本来ならここで終わるはずだった。しかし、「(合計で何本取れたか)わからん!!でも半分ももらわれへんかった」という投稿主のツイートが発掘され、さらなる騒動へ発展する。
なぜ取れた分を全部もらえないのか。そうした疑問の声が動画視聴者から巻き起こり、
「クレームを入れてもいい」
「店員は何考えてんだ」
「店側が悪い」
と店舗への「バッシング」がはじまった。
担当者「本来なら全部お渡しするべきでした」
真相はどうなっているのか。そのゲームセンターを運営する企業はJ-CASTニュースの取材に、落ちた量の「半分」しかその場で渡さなかったのは事実だと認め、「従業員が『機体側の不備』と勘違いしたためです」と詳しい理由を説明した。
取材に応じた担当者は「本来なら全部お渡しするべきでした」として、「次にご来店された際は、落ちたすべてのうまい棒を差し上げるご用意をしています」と明かす。また、アカウントを削除した投稿主については、「連絡を取りたいのですが、まだ出来ていません」と語った。なお、来店日時は把握していないという。
思わぬ騒動となった「うまい棒なだれ動画」。果たして、動画のような状況を簡単に引き起こすことは可能なのか。それを確かめるべく15年12月22日の午後、記者は東京都江東区の商業施設にあるゲームセンターへと向かった。
目星を付けたのは動画と同じタイプの機体。うまい棒の状態もケース内にうず高く積み上がって今にも崩れ落ちそうだ。労せず大量ゲットできるだろう。そう侮ってクレーンを突っ込ませたものの、山はビクともしない。表面の数本がかすかに動くだけで崩れ落ちる気配はまったくない。よく見ると、うまい棒同士が強固なスクラムを組んで絶妙のバランスを保っている。
わざわざ1000円札を両替してさらに2回プレーしたが、結局合計300円を使って3本のみという何とも「しょっぱい」結果に終わった。意図的になだれを起こすのは案外難しい。
居合わせた店員に「なだれ」を起こした利用者がいるかどうか聞くと、「ほとんどいませんね」と苦笑された。