「政権交代」のためなら「かわりばんこ」「くじ引き」もOK? 茂木健一郎氏の主張は「民主主義の否定」なのか

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   「政権交代が定期的に繰り返されることにメリットがある」「極論すれば、たとえば6年毎にかわりばんこにやったり、くじ引きでもいいくらいだ」。

   脳科学者の茂木健一郎さんがこうネットに投稿して、大きな物議をかもしている。政権交代の重要性を訴えることが趣旨のようだが、茂木さんの最近の政治的言動とからめて「民主主義を否定する発言」「本気で言ってるのか」といった批判がツイッターでは目立つ。

  • 政権交代のためなら「かわりばんこ」や「くじ引き」でもいい?
    政権交代のためなら「かわりばんこ」や「くじ引き」でもいい?
  • 政権交代のためなら「かわりばんこ」や「くじ引き」でもいい?

「政権交代で政治家の能力が高まっていく」

   茂木さんは、「政権交代は政治家にとって学びのサイクル」と題した記事を2015年12月19日、ブログ投稿サイト「BLOGOS(ブロゴス)」に掲載。政権交代を「議会制民主主義における不可欠な『新陳代謝』」だとして、過去にツイッターに投稿した内容を編集、転載したものだ。

   その理屈はこうだ。政治家は与党に入ると、冒険的な政策は取らなくなり、穏健になる。野党になると、「岡目八目で政策を精査することができる」。政権交代のサイクルを経験することで「政治家としての能力が高まっていく」のだという。

   「政権交代が定期的に繰り返されることにメリットがある」「政権交代のリアルな可能性のない民主主義は不完全である」という主張が、冒頭の表現につながった。

   もちろん、茂木さんも「かわりばんこ」や「くじ引き」は「極論」と認め、選挙による政権交代が望ましいという。

   論考は話題を集め、とりわけ「かわりばんこ」や「くじ引き」という方法に多くの批判が寄せられている。ツイッターなどネットには

「民主主義を否定する発言だと理解しているのか」
「憲法学者に聞いたら、全員が口を揃えて『そんな制度は違憲だ!』と言うでしょうね」

と反対意見が目立つ。

くじ引きで政治家が決まることもある

   実際にくじ引きで政治家が選ばれたことはある。2015年4月の熊本市議選では2人の候補者の得票が同数で、最終的にくじ引きで当選者が決まった。ほかの自治体でも、最後はくじ引きで決めた例はある。

   また、50年以上も無投票で村長が選ばれ続けている島もある。

   大分県の姫島は、1955年を最後に村長選が行われていない。この選挙で小さな村内にしこりが残ったから、が定説だ。現村長の藤本昭夫氏とその父親で前村長の熊雄氏の2人が16期連続で村長を務めてきた。

   藤本村長はメディアにこう話している。

「それなりの対立候補が出れば私に対する不信任であり、争わずに身を引くつもりだ」(西日本新聞、2008年10月29日付)
「民主主義に選挙は必要だけれど、現実には選挙のための政治になっていないでしょうか」(朝日新聞、12年1月1日付)

   民意はすべて選挙で示す。実際にはそうなっていないこともあるのだ。

   茂木さんの論考が批判にさらされてしまったのは、安全保障関連法に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」のデモに参加するなど、自民党に批判的な立場を鮮明にしていることが原因のようだ。ツイッター上には

「国民の選択が気に入らないから選挙を否定してるアホ」
「自分が望まぬ勢力が政権に就いてるからといって、民主主義のシステムを安易に崩そうという考えに走るのは愚かである」

と厳しい指摘が大半だ。しかし、中には

「これは正論だろ。お前らは人が言ってる内容じゃなくてその人のヘアスタイルだけ見て決めつけてるだろ」

という声もごく少数ながらある。

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