高齢化社会を迎え、日本でも65歳以上の5人に1人がなる認知症が問題になっているが、実は、人間は進化の過程で認知症になりにくい遺伝子を持つようになったことが、米カリフォルニア大学のエジット・バーキ教授らの研究で明らかになり、米科学アカデミー紀要「PNAS」2015年11月30日号に発表された。
脊椎動物は、生殖することができなくなると死ぬようにできている。子ども(卵)を産んだり、育てられなくなったりすると、すぐに老衰する。いわば「ピンピンコロリ」で、例外として「老後」があるのは人間とクジラだけだ。人間の場合は赤ちゃんが手のかかる状態で生まれてくるので、「祖父母」の知恵と助けが必要なため、生殖能力がなくなった後も生きるよう進化したといわれる。
研究チームは、人間とチンパンジーの遺伝子を比較した結果、アルツハイマー病に抵抗する遺伝子変異の「CD33」の濃度が、チンパンジーの4倍であることを突きとめた。また、新たに「APOE2」と「APOE3」と呼ばれる遺伝子変異も認知症を予防するために進化したと思われることがわかった。
「祖父母」が認知症になると、集団の中で知恵や文化の伝承ができなくなるので遺伝子変異が進化したという。バーキ教授は「期せずして高齢者を認知症から守ることに役立つ遺伝子変異があることを発見できました」と語っている。