2015年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に「マツダロードスター」、もうひとつの「RJCカーオブザイヤー」に「スズキアルト/アルトラパン」が、それぞれ12月までに決定した。
日本には現在、大きく二つの「カーオブザイヤー」があり、お互いに「棲み分け」を図ってきたが、今年の2位以下を見ると例年以上の「接近」も見られた。
自動車出版社vs研究者・ジャーナリスト
マツダの「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞は2014年のデミオに続いて2年連続、6回目。「ロードスター」の受賞は2005年に次いで2回目。受賞理由について、実行委員会は「明確なコンセプトを持ち、作り手の熱い情熱を感じさせる(中略)。ドライビングの楽しさを追求し、真のクルマ文化を根付かせたいと努力してきたマツダの企業姿勢も高く評価した」という。
一方、スズキの「RJCカーオブザイヤー」受賞も2014年のハスラーに続いて2年連続、6回目。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)は「スズキアルト/アルトラパン」について「新設計のプラットフォームによる軽量化が最大の特徴だ。(中略)エンジンの改良など、まさにミリ単位の挑戦だった。その結果、操縦性や燃費が大幅に向上した」と評価した。
2つのカーオブザイヤーのうち、1980年に始まった「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、自動車雑誌の出版社などが実行委員会を作り、選考委員にはレーサーやラリースト出身の自動車評論家が多い。これに対して、「RJCカーオブザイヤー」を主催するRJCはNPO法人で、会員には大学教授などの学識経験者や技術者、レーサー出身でない自動車評論家が多い。
RJCは、伝統ある「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を「メーカーの接待づけ」や「運動性能に偏重した選考」が多いなどと批判して1991年に誕生した。このため、過去の受賞車も、「日本」にはスポーツカーや高級車が多く、軽の受賞は一度もないのに対して、「RJC」はスポーツカーよりもファミリーカーが多く、軽が何度も受賞している。
過去の受賞例を見ると、両賞が一致したのは、2011年の日産リーフのほか、2001年のホンダフィット、2000年のホンダシビック/フェリオ、1997年のトヨタプリウス、1992年の日産マーチしかない。
今年は両賞とも同じスポーツカーが上位を占める
今回、「日本」の最高得点だったロードスターが得票442点に対して、次点のホンダS660は401点で、スポーツカー同士が首位を争った。スズキアルト/アルトラパンは6位(75点)と振るわなかった。
一方、「RJC」は首位のスズキアルト/アルトラパンが264点だったが、次点はマツダロードスターの194点、3位はホンダS660の190点で、こちらもスポーツカー2台が上位に食い込んだ格好となった。
これは、2015年がスポーツカーの当たり年だったことを示している。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会もスズキアルトを「軽自動車が本来持つべき魅力をとことん追求し、基本性能に極めて優れたモデル」と認め、スモールモビリティー部門賞として処遇した。
今年のカーオブザイヤーは例年以上に、両賞が接近、拮抗する形になった。