全国の店舗でパチンコ台を調査した結果、すべてに不正が見つかったとして、警察庁がパチンコ台の撤去を求める事態になっている。なぜ今ごろになって、警察は腰を上げたのだろうか。
大当たりになる「中央入賞口」付近の釘の間隔を広くし、小当たりになる「一般入賞口」付近の釘の間隔を狭くする。
メーカー側も不正なパチンコ台を出荷
こうすれば、パチンコ玉の消費は早くなるものの、大当たりが出る確率もアップする。ギャンブル性を高めるため、パチンコ台ではこんな「釘曲げ」が慣習的に行われていると、業界関係者の間ではみられている。
数十年に渡って行われてきたというが、業界紙によると、警察庁の保安課では、2015年1月になって、この釘曲げ行為を取り上げ、風営法の趣旨に反する最も悪質な行為だと店舗側への行政講話で指弾した。ここ3年間の釘曲げについての行政処分を見て、このような発言になったという。
その意向を受けて、遊技産業健全化推進機構が6~8月まで遊技機性能調査を行い、警察庁では11月6日、すべてに不正が見つかったとして、店舗側にパチンコ台の速やかな撤去を要請した。パチンコ台については、警察OBもいる「保安通信協会」が釘などの状態をみる「型式試験」の検定をしているが、調査したパチンコ台には、「検定機と同性能のパチンコ遊技機が1台も発見されない」という異常事態だったというのだ。
それも、今度は、パチンコ台のメーカー側に落ち度が見つかった。各メーカーでつくる「日本遊技機工業組合」では、11月に入って、出荷段階ですでに検定機と異なる性能だったことを確認した。そして、対象となるパチンコ台を回収すると警察庁に報告し、それを受けて、警察庁が店舗側に撤去を要請する事態になっていた。
ギャンブル性を高めるやり方がパチンコ業界全体で行われていた
パチンコ店側は、メーカーの対応を見ないといけない様子で、店舗側団体の1つ、全日本遊技事業協同組合連合会では、取材に対し、「警察庁から撤去の要請が出ていますので、協議している段階です」と広報課の担当者が答えるのに留まった。
釘曲げにメーカーも関わっていたとすると、ギャンブル性を高めるやり方がパチンコ業界全体で行われていたとも言われかねないことになる。
レジャー白書によると、パチンコにおける1人当たりの平均消費金額は1989年が年間50万円ほどだったのに対し、2014年は年間300万円ほどと約6倍に跳ね上がっている。ギャンブル性の高いパチンコ台に多額のお金を注ぎ込んでいる人が多いとみられ、家族らを巻き込んだ多重債務問題につながっているとの指摘が出ている。
ネット上では、そうなる前に、警察がもっと早くから業界を指導するべきだったと批判する声が多い。天下りを通じて警察が業界と癒着しているためではないか、との憶測も出ているほどだ。
今回、警察が腰を上げた理由については、東京五輪までにパチンコ店を減らしたいのではないかといった声や、警察への不信感から、茶番劇ではないかという、うがった見方さえ出ていた。
パチンコそのものへの批判も根強い。「ギャンブルとして認める法整備をしてその代わり規制を厳しくすべき」との声もあるが、「パチンコいらない」「廃止でOK」との意見が数多く上がっている。