不妊症の最先端治療の1つに、患者が自分の卵巣から取ったミトコンドリアを卵子に注入する「ミトコンドリア自家移植法」がある。ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを作り出す役割があり、ミトコンドリアを卵子に入れることによって、「卵子が活性化して若返る」といわれるが、その効果や安全性はわかっていなかった。
日本産婦人科学会の倫理委員会は2015年12月12日、この方法を試みる臨床研究を国内で初めて認めると発表した。大阪府内のクリニックが実施する。海外ではカナダやトルコなどで200回以上行われ、20数人の赤ちゃんが生まれているが、妊娠率が高まるかどうかははっきりしない。
ミトコンドリアを精子とともに注入して体外受精
「卵子若返り法」は、腹腔手術で女性の卵巣の細胞を取り出し、その中からミトコンドリアを抽出して凍結保存する。そして、別に取り出した本人の卵子に、ミトコンドリアを精子とともに注入して体外受精させる。
記者会見で、同学会倫理委員会の苛原(いらはら)稔委員長は「老化した卵子が若返るという理由で海外では行われているが、効果は十分検証されていない。他人ではなく自分のミトコンドリアを使うため、倫理上の問題はないと判断して、(治療ではなく)臨床研究として認めた」と語った。