【団塊スタイル】(NHK)2015年11月6日放送
「腰痛は怖くない!~動いて治す最新治療~」
50歳以上の4割が悩み、国民病といわれる腰痛。実は、腰痛の85%は医療機関に診てもらっても画像は健康な人と変わらず、原因がわからない。残り15%が椎間板ヘルニアなどと診断されるだけだ。
MCの国井雅比古「(腰のレントゲン写真の)映像見ただけで、ア、イテテテとなりますね~」
MCの風吹ジュン「私、28年前と15年前に2度ギックリ腰をやっています」
ゲストのアグネス・チャン「乳がん手術の後、右側をかばっていたため、左側の腰が痛くなりました」
1日3分、これだけで治るから「これだけ体操」
番組の冒頭、慢性の腰痛に苦しむ女性Nさん(50歳)が紹介された。17年前、重い荷物を持ってガクンとギックリ腰をやった。トイレまでハイハイで行き、1か月間安静にした。現在も痛みが続くが、MRIやレントゲンで見ても健康な人の腰の状態と変わらない。「お守りみたいで安心だから」とコルセットを欠かせない。そこで、腰痛治療の専門家、松平浩・東京大医学部付属病院特任准教授に診てもらった。松平医師はあちこちを触って全身をチェック。
松平医師「1か月安静にしたのが良くなかったですね。だから現在治っていない。ベッドで4日以上寝ていると悪くなります。すぐに体を動かすべきでしたね。これから簡単にできる『これだけ体操』を試してみましょう」
松平医師が披露した「これだけ体操」の方法はこうだ。
(1)足を肩幅より少し大きく開く。
(2)両手をお尻の骨盤に置いて押し込むようにする。
(3)あごを引き、息を吐きながら腰を後ろに反らせる。
(4)痛みがあるところまで反らせて、3秒間キープ。
(5)ゆっくり前に戻す。これを3分間繰り返す。
以上、たったこれだけだから「これだけ体操」という。Nさんは数回繰り返しただけで、見違えるほど前屈ができるようになった。
「痛くありません。気持ちいいです」
Nさんは5日後にはコルセットを外せるまでに改善した。
国井「この体操がどうして効果があがるのですか?」
松平医師「ほどよく体を動かすことが腰痛の治療にいいことが最近、わかってきました。できれば腹筋や背筋もやりたいところですが、難しいと長続きしません。一番効く運動だけに絞り、長続きしやすくしました」
アグネス「腰痛は安静がいいと言いますが?」
松平医師「コルセットは腰のゆがみを固定してしまい、治療効果はありません。2012年に日本整形外科学会と日本腰痛学会が治療のガイドラインを改訂し、安静を勧めず、体を動かす方向に変わっています。腰の骨の間にはクッションの役割を果たす椎間板があります。椎間板の真ん中には髄核という神経が通る管があります。椎間板がゆがむと髄核が圧迫されて神経に痛みが走ります。動くことで椎間板のゆがみをほぐしてあげるのです」
「恐怖」の条件反射が痛み物質を分泌する
10年前に椎間板ヘルニアで2度手術した男性Sさん(53歳)が登場した。Sさんはヘルニアの除去に成功したが、腰痛が再発、3度目の手術を勧められ、松平医師のもとを訪れた。松平医師は理学療法士と相談し、手術なしの簡単な方法でSさんの腰痛を治した。その方法が「タオル体操」だ。やり方はこうだ。
(1)長いタオルを縦に折って、腰に巻きつける。
(2)布団の上にうつぶせに寝る。
(3)タオルの両端を手で押さえつけて、腰を布団に固定させる。
(4)その姿勢で背中を反らして10秒間キープする。
Sさん「前の医師から『反らしてはいけない』と言われたので、驚きましたが、これをやっていくうちに腰が軽くなり、楽になりました」
Sさんが松平医師を訪れた時の映像と、その1か月後の映像がある。1か月前は猫背でこわごわと歩いている。ところが1か月後には軽々と走っている!
アグネス「ええ~、すごい! 何が起こったのですか?」
松平医師「『恐怖回避思考』という、痛みをかばう気持ちを取り除いたのです。Sさんに、画像上は全く異常がないのに痛みがあるのはなぜか? 痛みの原因は恐怖回避思考による悪循環にあるのです。過去に激痛の経験ある→再発の不安→コルセットで体を動かさない生活→腰回りの筋肉の硬直化→血流の悪化→脳から痛み物質が分泌→腰痛が慢性化、という悪循環です。そこで、痛みの恐怖をやわらげて体を動かすこと勧めました」
テレビの映像を見ただけで3割の人が治った!
国井「ここで面白い映像を紹介しましょう。2015年7月にNHKスペシャルで『腰痛・治療革命~見えてきた痛みのメカニズム』を放送しました。その中で、専門医が『腰痛は自然に治る』と呼びかける映像を流しました。映像はインターネットを通じて広がり、なんと映像を見ただけで、腰痛に悩むある介護施設の職員175人のうち約3割の68人の腰痛が治ってしまったのです」
その映像が番組で流れた。日本整形外科学会の専門医・稲波弘彦さんが椎間板ヘルニアの手術シーンをバックにこう語っている。
「皆さんご存知の椎間板ヘルニアは、時間がたてば自然になくなる場合がほとんどなのです。9割が自然に消滅します。......あなたの腰痛に手術は必要ありません。痛みを減らすには怖がらずに動くことが一番の薬です」
椎間板ヘルニアは、ヘルニアが飛び出して神経組織に食い込んで痛む。しかし、神経組織が炎症を起こすと、体の免疫機構が働いて炎症部分を治すとともに飛び出したヘルニアを消滅させることが最近分かってきた。
国井「『これだけ体操』をやったというならわかりますが、映像を見ただけで痛みがなくなるなんて、魔法みたいですね(笑)」
松平医師「映像を見て正しい知識で知り、『動いても大丈夫なのだ』とコルセットを外したから、悪循環から抜け出すことができました。腰をかばっている人は、条件反射的に痛み物質を出しています」
国井「まさに『病は気から』ということですね」