新国立競技場の建設計画で公表された2案について、東京五輪パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「僕はB案の方がいいと思うね」とさっそく一方に肩入れする発言をして、波紋を広げている。
森会長に決定権はないが、影響力は決して小さくない。関係閣僚や前都知事からは発言を疑問視する声が上がっている。
「いかにもスポーツという雰囲気が出ている」
日本スポーツ振興センター(JSC)は2015年12月14日、外観イメージやコンセプト、総工費などをまとめた2案の技術提案書を公表した。
これを受け、森会長は14日、報道陣に対し、「僕はB案の方がいいと思うね」と明言。
「いかにもスポーツという雰囲気が出ている。ギリシャの神殿みたいな感じですね」
とほめた。一方のA案については「ASEANの国のお城や古墳」と表現し、
「この中でスポーツ大会をやっているという明るさがない感じかな」
と厳しい評価を下した。
もちろん森会長に決定権はないが、五輪組織委会長という役職上、影響力は小さくない。撤回されたザハ・ハティド氏の設計にも「生カキみたい」とコメントして物議をかもしたばかりだ。
JSCも2案の公表にあたり、事業者の名前は伏せていた。
馳文科相「そんなこと言っていいんですかね」
森会長の発言には波紋が広がっている。馳浩文部科学相は12月15日の会見で、「報道で見ました。そんなこと言っていいんですかね」と苦笑しながら発言に釘を刺した。自身は「両方ともいいですよね」と明確にしていない。
前東京都知事の猪瀬直樹さんはツイッターで「どうしてこうも立場をわきまえることができないのだろうか、このお方は」とあきれた様子だ。教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんもブログで「立場からするとB案いいなんて発言とてもまずい」と指摘した。
ツイッターなどネットにも「立場上そういう発言していいのかな?って思った」「自分の立場わかってて言ってるのか?」と批判的な意見が多い。
一方、遠藤利明五輪相は会見で「それぞれご意見があるのは当たり前。それぞれの立場で言うのは問題ない」と話した。
選定はJSCの審査委員会の採点により1つに絞り込み、アスリートへのヒアリング、サイトでの意見募集を参考にして12月中に大東和美理事長が決定。関係閣僚会議で正式に決まる。