冬の到来とともに、招かれざる客が日本の空に飛んでくる。微小粒子状物質「PM2.5」だ。
深刻な大気汚染が進む中国・北京では2015年12月初め、PM2.5の濃度が最高レベルとなった。風に乗り海を越えて、地理的に中国に近い九州だけでなく北海道にも到達している。
子どもの帽子に空気清浄器を装着
札幌市では12月10日14時、PM2.5の最大濃度が1立方メートル当たり38マイクログラムを観測した。この値は、環境基本法が定める基準値の1日平均値、同35マイクログラム以下を超える。北海道テレビニュースの映像を見ると、市内はうっすら白い霧がかかっていた。道内ではこの日、北部の利尻町で同47マイクログラムを記録している。
この日は気圧配置の影響で、中国からのPM2.5が北海道に流れ込みやすくなっていた。配置が変われば九州、さらに本州へと汚染物質が飛来しやすくなる。実際に日本気象協会の「PM2.5分布予測」によると、12月16、17日にかけては沖縄県で多くなるとみられる。日本全国どこでも、汚染粒子の流入は止められそうにない。
日本国内では今のところ、PM2.5による重大な健康被害は起きていないようだ。しかし「本場」中国では年々状況が悪化している。北京では12月8日に濃度が最悪レベルとなったことから、車の走行規制や学校の休校措置がとられた。もはや市民生活に悪影響を及ぼしているのだ。
対策も、マスクだけにとどまらない。テレビ番組で紹介されたのは、子どもが被る帽子だ。透明なフェイスガードが付いていてPM2.5を防ぐのかと思えば、実は帽子に小型空気清浄機が取り付けられている。ここで外気を浄化し、新鮮な空気を子どもの顔の前に送り届ける仕組みだ。突飛な製品に見えるが、意外にも売れているという。裏返せば、中国では子どもが安心して外で遊べないほど大気汚染がひどいということだろう。
日本でも、PM2.5防止グッズは各種出回っている。インターネット通販で販売されているものを見ると、例えば自転車通勤者向けの大型マスクは、口元を幅広く覆うものだが、呼吸時にPM2.5を肺まで吸い込まないように高性能フィルターを仕込んでブロックしている。ほかにも、衣服に付着したPM2.5を吸い取る電動ブラシ、目の周りを覆う特殊素材を使った子ども用眼鏡、使い捨てマスクに吹き付けると微粒子をキャッチするスプレーと、種類も豊富になってきた。