中国発「世界鉄鋼不況」が始まった 10年は続く「3つの過剰」の深刻

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鉄鉱石の価格下落も「悪循環」に拍車

   日本の鉄鋼大手各社はだぶついていた在庫調整のため、2015年4月から大幅な減産を始めた。予定では、その効果が市況に現れ、中国の輸出攻勢も収まって10月以降の下半期には減産を解除するはずだったのだが、その目算が大きく外れてしまった。とりわけ、中国の9月の鋼材輸出量が単月で過去最高を更新する勢いとなったのが誤算だった。こうしたことを背景に日本国内の鋼材単価は、2014年10~12月の1トン当たり8万円弱を直近のピークに下がり続け、2015年7~9月には7万円弱にまで下がった。需給バランス悪化による鋼材価格の下落は、鉄鉱石などの原料価格にも低下圧力をもたらしている。鉄鋼メーカーには朗報のようにも聞こえるが、自動車メーカーなど実需家による鋼材値下げ圧力につながっているだけで、鉄鋼メーカーにとっては負の連鎖とも言える「悪循環」といえる。

   鉄鋼市場の専門家によると、鋼材価格下落の震源地で世界最大の粗鋼生産を誇る中国には「3つの過剰」があるという。1つは生産能力。2つ目が、それに伴う鋼材の供給過剰。3つ目は鉄鋼企業数の多さだ。

   3つの過剰のなか、中国は世界最大の年8億トンの粗鋼生産を続ける。その結果、中国国内の需要の減少によって余った分が輸出にまわり、世界の市況を悪化させるわけだ。こうした中国の問題の解消には「10年かかる」(国内証券系アナリスト)との見方もあり、先行きが読めないのが実情だ。

   中国製品の輸出による市況悪化の影響は無論、日本メーカーにとどまらない。世界最大手の欧州アルセロール・メタルの2015年7~9月期決算は、純損益が7億1100万ドル(約870億円)の赤字に転落した。前年同期は2200万ドルの黒字で、赤字は2四半期ぶり。ミタルは10~12月期も環境は改善しないと見ており、12月期通期の業績予想を下方修正し、無配とすることも決めた。中国の鉄鋼大手、宝山鋼鉄の2015年7~9月期も純損益が日本円で200億円近い赤字に転落。鉄鋼世界同時不況の様相を呈している。

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