「私、ダイエットしなきゃ」。声の主が大人であれば、しばしば耳にするセリフだろう。しかし、もし小学生がこう言ったら、ちょっと驚くかもしれない。
最近はおしゃれな小学生女子が大人びたファッションに身を包み、化粧する姿を目にすることもある。だがダイエットに関しては、成長期の子どもが乏しい知識で過度な食事制限に走ったら大変なことになる。
「この間、40キロにはなりたくないって言ってた」
インターネットの質問投稿サイトには「小学生でもできるダイエットはありませんか」といった内容が見られる。本当に小学生かどうかは不明だが、「男子にたまにぽっちゃりと言われる」「簡単なダイエットを教えてください」と問いかけている。
ダイエット専門掲示板には「小学6年生でやせたい子」「小学生ダイエット」といったタイトルの下に、多くの投稿が寄せられている。「卒業までに6キロ落としたい」「体重やばいかも」「161センチ、43~44キロ やせたいよおー」といった書き込みが続いていた。
ネット上だけに気楽に、多少大げさに書き込んでいるかもしれないし、そもそも本気の悩み相談ではない可能性もある。ただ、小学生が真剣にダイエットを考えているケースがないとは言えないだろう。
小学生の子を持つ親に取材した。小6の娘の父である東京都内在住の40代男性は、「本人はあまり体重を気にしていないと言いましたが、横で妻が『でもこの間、40キロにはなりたくないって言ってたじゃない』と指摘していました」と話す。娘が友人とダイエットを話題にすることはないようだが、学校ではたまに「やせなきゃ」といった会話を耳にするそうだ。
神奈川県に住む40代男性は、娘が小4。父親である自分から見て太っているようには見えないが、習い事で通っているバレエの発表会前には「ダイエットしなきゃ」と言っていたという。「こういう言葉を自然と使っているのは少し驚きました。バレエの先生や妻が口にしていたのを覚えたようで、娘も大人びた会話をまねしたような印象です」。
宮城県の30代女性は、小5と小3の2人の娘を育てる母親だ。2人は冗談半分で「ダイエットする」と口走っても、行動に移すわけではないという。学校で話題になっているかどうかについても「聞いたことありません」と話した。
誤った食事制限で体のすべてに悪影響
ともかく小学生女子でも高学年となれば、多少なりとも容姿が気になる年頃だ。前出の宮城県に住む女性は、小5の長女が「友達から『足が太い』と言われて、気にしているようでした」と明かす。一方、小3の次女は体格がよく、食欲旺盛であまり体重を気にしている様子はない。「母親としては、娘が極端なダイエットをするのはもちろん反対です。でも、好き嫌いをして食事のバランスが悪くなるのも心配」と語った。肥満になるのも、健康を害する。母親としては巧みなかじ取りが迫られる。
ひと口に「小学生ダイエット」と言っても、適度に運動してやせるのであればむしろ健康的だろう。問題は、過度な食事制限をして必要な栄養をとらないような誤った減量だ。
子どものダイエットの危険性を指摘した記事が、「プレジデントオンライン」2013年10月12日付で掲載されていた。記事中、女子栄養大学教授・上西一弘氏が「成長期のダイエットは健康面ではすべてにおいて悪い事態しか招かない」と警鐘を鳴らし、こう続けている。
「体ができあがった大人ならまだしも、小中高生は体が発育・発達していくまさに成長期にあります。この時期に誤った食事制限をすれば、筋肉や骨をはじめ体のすべてに悪影響を及ぼします」
特に問題視されたのが、カルシウム不足。骨がスカスカになり、将来骨粗鬆(こつそしょう)症のリスクが高まる。
極端な例かもしれないが、必要のない食事制限を続けた小学生女性が摂食障害となるケースも、ネット上で報告されていた。
自分の娘が「ダイエットしなきゃ」とつぶやいたら...親としては少し気にかけてもいいだろう。