成長ホルモンが悪さをする
(1)そもそもがんは、突然変異の細胞の異常増殖によって起こるから、細胞の数の多い人、つまり背の高い人ほど、がんになる確率は高い。体重の多寡は脂肪の量などが影響し、細胞の数が身長ほどには比例しない。
(2)背の高い人は、遺伝的要因とともに成長ホルモンの量が多いと考えられる。成長ホルモンの量が多いと、細胞の増殖が活発化して新しい細胞が次々に生まれる。その分、突然変異の細胞が生まれる確率も高まるわけだ。
(3)最近、成長ホルモンそのものが、がんの発症と関係あることがわかってきた。成長ホルモンは肝臓で「IGF-1」というインスリン様成長因子を作る。普通、細胞はダメージを受けると、がん細胞になるのをさけるために自ら死んでいく。これを「アポトーシス(自死)」という。ところが、IGF-1は傷ついた細胞をアポトーシスから守る作用がある。このため、傷ついた細胞が生き残り、がん細胞となって増殖を始める確率が高まる。
(4)実際、マウスの実験で成長ホルモンを働かせないようにすると、がんにならずに寿命が1.4倍も伸びた。人間でいえば200歳の長生きである。人を成長させようと頑張ってくれるホルモンの働きが裏目に出てしまうのだ。
しかし、背が高いといって悲観することはない。米がん協会のエリック・ジェイコブ氏はこう語る。「長身の人が、背が伸びないよう努力したり、過剰ながん検査を受けたりする必要はない。正しい生活習慣を維持し、喫煙をさけ、適正ながん検査を受ければ、リスクを軽減できることに変わりはない」。