若い時に太っていた女性は、その後減量しても心臓への悪影響が数十年続くことが、米ハーバード大学医学大学院のステファニー・チルビー助教授らの研究でわかり、米医学誌「JACC」(電子版)の2015年11月25日号に論文が掲載された。
心臓病の突然死を防ぐには若いころからの節制が大事なようだ。
32年間におよぶ追跡調査を実施
研究グループは、健康な米国人女性7万2484人を対象に、1980~2012年までの32年間におよぶ追跡調査を行った。対象者の18歳時点の身長、体重を基本にして2年ごとに肥満度を表わすBMI(体格指数)を調べた。32年間のうち心臓突然死が445人、心臓疾患による死亡が約1300人、急死には至らなかった心筋梗塞が約2300人いた。
この結果、心臓突然死のリスクは、成人期をとおして適正体重を維持した女性に比べて、成人期に過体重だった人は約1.5倍、肥満の人は約2倍だった。この傾向は、その後減量したかどうかにかかわらず、追跡調査中続いた。
若いころから20キロ以上増えると突然死リスクは2倍
また、成人期に適正体重だったのに中年期から体重が大幅に増えた女性も、18歳時のBMIにかかわらず心臓突然死のリスクが高かった。特に、成人期から中年期にかけて体重が20キロ以上増えた人は、適正体重を維持した人に比べて、心臓突然死の割合は約2倍に増えた。なお、成人期に過体重、肥満だった人は心臓疾患による死亡や心筋梗塞になる割合も高かったが、心臓突然死ほどではなかったという。
チルビー助教授は「現在はダイエットなどで適正な体重になっている人も、若いころに肥満歴があると心臓突然死のリスクが高いので、気をつけてほしい。心臓突然死のほぼ4分の3は、現行のガイドラインでは危険と判定されていない人に起こっています」と指摘している。
今回の研究では、なぜ過去の肥満歴がずっと悪影響を与え続けるのか説明していないため、米国の専門家たちは当惑顔だ。ある専門医は「肥満の体への影響は多次元的であるということでしょう。今回の研究をもとに減量と運動の重要性をさらに啓発していく必要があります」とコメントしている。