ナプキン、タンポンに替わる「第3の生理用品」といわれる月経カップ。シリコン製のコップ状のもので、膣の中に入れておくと経血が中にたまり、膣の外には出てこない。カップを取り出して経血を捨て、カップを洗浄すれば1個で約10年間も使える。ゴミとして捨てるナプキンやタンポンに比べると環境にも優しいし、コスパも抜群、漏れない・むれない・かぶれない・臭わない......と、いいことづくめのようだ。
「そんなモノ入れて痛くないの?」という恐怖感がハードルを高めて、ごく一部でだけ密かに話題になっていたが、最近、関連サイトにアクセスが殺到するほど人気を集めている。
あの女医・宋美玄さんも「これ、もっと早く使いたかった!」
ブームに火をつけたのは、女性の間で支持者が多い産婦人科医・性科学者の宋美玄さん。2015年2月2日に自身のブログ「~オンナの健康ラボ~」で、体験記を発表したのだ。「環境にとても配慮した生活をしている私の妹(医師)の激烈お勧めで、月経カップを使ってみた。結論を言うと......これ、もっと早く使いたかった!便利すぎる!快適すぎる!そして地球にも優しすぎる!!さよなら不快な日々」と絶賛。同年3月19日の朝日新聞紙面「オンナの保健室」でも、以下のように月経カップを勧めるコメントを出した。
「初めて入れる時はちょっとやりにくかったのですが、すぐに慣れました。たまった頃にカップを取り出して経血をトイレに捨て、また装着しますのでゴミが出ません。経血が染み込んだナプキンを肌に当てているあの不快感もありません。シリコン製なのでナプキンのような繊維と比べて雑菌が繁殖しにくいです。......日本女性は自分の外陰部や膣を見たり触ったりすることに抵抗を感じる人が多く、タンポンですら怖いという声を聞きます。自分の身体の大切な一部ですから、いとおしんで。誰よりも自分自身が一番把握してくださいね」。
月経カップは国内では作られていない。薬事法で「生理用品」(医薬部外品)の基準を、「経血を吸収処理するもの」「使用面は白色」などと定められており、経血を捨てて処理する月経カップは対象外になるからだ。このため欧米の製品を通販で買うしかないが、1個で4000円ほど。「うわ~、高っ」と思うかもしれないが、10年間繰り返し使えるので格安である。日本では普通の店に置いていないことも認知度が低い理由の1つで、「キワい」「コワい」と思われてきた。
外出先での取り扱い方を指南する利用者も
宋美玄さんのブログに、さっそく反応したのが「月経カップ歴5年」というブログ名「さらさら録」さん。「ずっとお勧めしたかったのですが、何しろ生理の話なのでなかなか言えなくて......。やっと書ける、ヒャッホ~!の気持ちです」と喜び全開の文章で、まず月経カップの不安が一番大きい「入れ方」についてこう説明する。
「カップの上の部分をペタっと半分に潰して、さらに畳んで四つ折りにして膣内に挿入します。すると、膣内で勝手にベル状に開き子宮口を覆う形になります。私の使っているカップは膣内でペコっと膨らんだ感覚があるのですが、最初の頃は心配なので、指でカップのふちをグルっと一周して子宮口からはずれていないか確認していました。装着の練習をする時は、生理中で在宅している時が一番いいです。生理中以外だと滑らないので痛いです。」
次に心配なのが、月経カップの取り出し方だ。「カップの下の部分にしっぽのような持ち手部分があります。このしっぽを持ち、膣圧で押し出して取り出します。しっぽ部分が当たって痛いという方もいます。その場合は自分にちょうどいいサイズに切っちゃいましょう。私も切って面取りして使っています」。
そして最後に心配なのが、外出先での経血の捨て方とカップの洗浄法。実は、公共トイレの個室内にシンクがない場合が多く、外出時に気を使うことが月経カップの一番のネックになっている。この点については、「経血はトイレの中に流します。カップはトイレットペーパーで拭って再装着します。最初は毎度水洗いしたのですが、面倒になり、除菌ウェットティッシュで拭くようになり、ついにはトイレットペーパーになりましたが、問題なく使えています。生理が終わったら、薬用石鹸で洗い、除菌ウェットティッシュで消毒して布袋に保管しています」。
自分の経血が観察できて」「生理って不思議、面白いなあ~」
トイレットペーパーで拭くだけで衛生面での問題はないのだろうか。宋美玄さんは自分のブログのQ&Aでこう答えている。「トイレの個室内に水洗いできるシンクがなければ、トイレットペーパーで拭くか、最悪、そのまま膣内に戻しても大きな問題はありません。......そもそも指やペニスの方がたくさんの細菌がついています。セックスと比べると、膣の中に入れる物がそこまでめちゃくちゃ清潔でなくてはならないというわけではありません」。
月経カップに関するネットレビューを見ると、「そもそも入れることに抵抗があったが、慣れると本当に楽。生理であることを忘れられる」という人がとても多い。多めの時は少し漏れる人もいるが、「温泉にも行ける」「スポーツもオッケイ」という効果がある。中でも意外な2次効果は、ナプキンやタンポンではわからなかった自分の経血をじかに観察できることだ。「出血だけでなく、おりもののような透明な粘液もあるんですね。量が多い、少ないもわかり、自分の体調が確認できます。生理の煩わしさから解放されて、生理って不思議、面白いな~と思えるようになりました」。