「石炭火力」めぐる日本政府のチグハグぶり 「先進国」のトレンドに逆行?

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LNGの2倍のCO2を出す石炭

   だが、OECDの規制も、ささやかな一歩でしかない。科学者らで作る国際NGO「クライメート・アクショ ン・トラッカー(CAT)」の集計によると、世界で新設が計画されている石炭火発は2440施設、出力は計14億2800万キロワットに達し、計画通りに新設が進むとCO2排出量は120億トンになるという。これは、産業革命後の気温上昇を2度未満に抑える国際目標達成のための許容量の最大約6倍だ。石炭火発をいかに抑えるかが地球温暖化防止のカギを握るというのが世界的な認識なのだ。

   OECD規制では日本が得意とする高効率型は対象外となっており、「輸出への影響はほぼない」と、経済官庁幹部は平静を装う。しかし、国際協力銀行(JBIC)が2003~2014年度に資金支援した石炭火力の輸出案件(計画段階を含む)23件のうち、規制対象外の高効率型はわずか1件にとどまる。

   もちろん、途上国は効率が悪くても低価格を選択せざるを得ない。OECD規制は効率が低い石炭火発でも、最貧国など対象を限定したうえ、出力が小さいものは「例外」として輸出を認めた。さらに、OECD非加盟の中国などが効率の悪い石炭火発の輸出を進めれば、かえって世界の温室効果ガスの排出量が増えてしまう恐れがある。このため、「高効率の石炭火力(の輸出)は温暖化対策になりうる」(丸川珠代環境相)というのも一面の真理だ。

   それでも、最高の効率の石炭火発でさえLNGの2倍のCO2を出すだけに、「今こそ先進国が脱石炭に舵を取り、世界をけん引するべきだ」(国際的NGO)との世界的な潮流の中で、日本の方向が逆向きであることは否めない。

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