靖国「爆発音」事件で容疑者が「再入国」した大きな謎 「韓国が日本に渡したのでは」母の主張は本当なのか

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   東京・九段北の靖国神社の公衆トイレで爆発音がして不審物が見つかった事件は、一度は韓国に帰国していた韓国人の全昶漢(チョン・チャンハン)容疑者(27)が羽田空港に再入国し、逮捕されるという意外な形で急展開した。容疑者は、韓国まで日本の記者が取材にやってきたことを再入国の理由に挙げている模様だ。

   だが、それほど騒がれているのであれば、日本に再入国すれば逮捕される可能性が高いことは明らか。にもかかわらず再入国に踏み切るという不可解な行動に、「誰かに(日本に)行かされた」といった様々な憶測が浮上している。

  • 事件現場付近の防犯カメラに不審な男が映っていた(写真:AP/アフロ)
    事件現場付近の防犯カメラに不審な男が映っていた(写真:AP/アフロ)
  • 事件現場付近の防犯カメラに不審な男が映っていた(写真:AP/アフロ)

日韓のメディア取材にいら立っていた容疑者

   事件は2015年11月23日に起きた。事件現場近くの防犯カメラに不審な男が映っており、分析の結果11月21日夜に日本に入国し、事件が起きた23日中に帰国したことが明らかになった。こういった情報をもとに、日本メディアは男の行方を追い、男への接触に成功する社もあった。

   日本テレビは12月8日、男が15年10月頃まで住んでいたという韓国中部の群山(クンサン)市のワンルームマンションを訪問した様子を放送。取材で男の携帯電話番号を入手したとして、電話に出た男は

「(靖国神社には)ただ行っただけ。東京を見て回ろうと思った」

などと靖国神社に行ったことを認める内容の話をした。ただ、事件については「分からない」と関与を否定した。男が日本に再入国したのは放送翌日の12月9日のことだった。全容疑者は、逮捕直後は

「日本の記者から取材を受け、(事件現場の)トイレを確認しにきた」

などと供述したと報じられているが、その後否認に転じたという説もある。

   韓国メディアの報道を見ると、全容疑者が日本メディアの取材にいらだっていた様子がうかがえる。朝鮮日報によると、全容疑者は出発前日の12月8日に、前出のワンルームマンションの大家と電話で話している。大家は

「日本の記者たちがあなたの行方を捜していて大変だった」

と伝えたところ、全容疑者は

「電話番号を知らせたのか?法律にのっとった手続きなしに聞いてくる人には絶対教えてはいけない」

と言って電話を切ったという。

聯合ニュース「外交摩擦はひとまず避けられた」

   全容疑者の母親は朝鮮日報に対して

「息子が自ら日本に戻って逮捕されたということは理解できない。誰かに行かされたのではないか」
「韓国の警察に聞いても『知らない』『ニュースを見ろ』としか言わない。日本に自国民を渡したのではないか」

などと不満をぶちまけている。同紙は、この発言を

「日韓両国の当局と関係がある何者かが男(編注:全容疑者)に接触し、日本警察の捜査に協力するように説得したのではないか、という趣旨」

だと分析した。仮に韓国当局が日本側から全容疑者の身柄引き渡し要請を受け、身柄を確保して日本側に引き渡した場合、韓国の国内世論の反発が避けられないことを念頭に置いているとみられる。

   ただし、中央日報は、全容疑者が日本に再入国する際の日韓のやり取りについて

「日韓外交当局間の意思疎通や事前協議はもちろん、捜査当局間の協力もなかったことがわかった。外交部当局者は『全氏が日本に戻って入国した正確な理由などはまだ把握できていない』と述べた」

と報じており、母親の主張には否定的だ。

   聯合ニュースは

「身柄の引き渡しをめぐる韓日の外交摩擦はひとまず避けられた」

と論評しながら

「自ら入国したとすれば、潔白を主張するため、あるいは法廷などで何らかの政治的主張をするためといった理由が考えられる」

と推測するが、前出のように全容疑者は現時点では事件への関与を否定。この仮説も成り立ちにくそうだ。

   謎は解けていない。

姉妹サイト