会計不祥事で揺れる東芝が、2006年に買収した米原子力大手「ウエスチングハウス(WH)」を巡り、市場の不信感が高まっている。東芝は原発事業を主要事業に位置づけながら、これまでWH社の詳しい業績の開示を拒否してきた。
しかし、2015年11月中旬、WHが過去に多額の損失を計上していたことが相次いで報じられ、東京証券取引所のルールに反して東芝が情報開示を怠っていたことも判明した。東芝は11月27日になって、ようやく釈明会見を開いたが、東芝に対する批判の声は止みそうにない。
「のれん代」が巨額の損失に一変
東芝は総額54億ドルを投じてWH株の9割弱を取得。2006年当時で6000億円を超える巨額のM&Aで、市場の関心を集めたが、その後は東芝の「アキレス腱」として注目されてきた。原発ルネッサンス(再評価)の流れが福島の東電原発事故を機に一変し、原発市場の冷え込みで「高値掴みしたWHで、東芝は巨額の損失計上を迫られる」との観測が出ているためだ。
実際、各メディアは15年11月中旬、WHが12、13年度に計1000億円超の損失を計上していたと報道した。問題になったのは「のれん代」で、ブランド力や技術力など目にみえないものも考慮して、純資産を上回る額を「のれん代」として資産計上する。
WHは福島第1原発事故後、原発の新規受注が進まず、「のれん代」を引き下げる減損処理を余儀なくされた。親会社の東芝は、これを公表していなかった。相次ぐ報道を受け、東芝は報じられた内容を追認するコメントを発表した。
さらに、その後、開示していなかったことが東証の指摘でルール違反だったことも判明した。東証の規定では、上場していない子会社の損失であっても、純資産額の一定割合を超える損失を計上した場合、投資家に「適時開示」する必要がある。2012年度のWHの損失は開示が必要な水準で、このルールに抵触していた。