AKB48は2015年12月8日、05年に東京・秋葉原のAKB48劇場で行った初回公演から丸10年を迎えた。この日行われた特別記念公演では、16年3月にグループを離れ「卒業」する予定の高橋みなみさん(24)が、「グループ総監督」の役割を横山由依さん(23)に正式に引き継いだ。
横山さんが高橋さんに後継指名されたのはちょうど1年前の9周年特別記念公演だ。横山さんはグループ内でも指折りの「努力家」として知られるが、総じてスピーチは不得手。特に選抜総選挙の順位発表といった「大舞台」では過呼吸気味になって事実上スピーチが成立せず、まともに立てない様子から「生まれたての子鹿のよう」という表現が定着していた。
こういったことから、総監督としての資質を不安視する向きもあった。しかし、今回の記念公演では一転。「AKB48のライバルはAKB48」だとして、「もっとすごい新しいAKB48を48グループのメンバーみんなと一緒につくっていきたい」と堂々と決意表明し、それを聞いていた高橋さんも「人はどんどん成長していく」と驚嘆しきりだった。
後継指名から半年後の選抜総選挙でも「ん~、わかんないな...。どうしよう」
横山さんは選抜総選挙の順位発表後のスピーチで、緊張で足がふるえてまともに立てず、言葉が出てこないこともしばしば。初のランクインを果たした11年には司会の徳光和夫アナウンサーに支えられてスピーチをするほどだった。後継指名から半年が経った15年6月の開票イベントでは過去最高の10位にランクインしたが、「ん~、わかんないな...。どうしよう」と言葉に詰まる一幕も。時間切れで徳光アナにスピーチを打ち切られるという有様だった。
10周年記念公演では、グループ総監督の「継承式」が行われ、高橋さんと横山さんが引き継ぎ書類にサインし、正式に新旧が交代した。その直後の横山さんのスピーチは、
「本当はうまく喋れるタイプじゃないし、ここに立っているだけでどうしょうもないくらい不安」
などと時折涙声になったもの、半年前の選抜総選挙とは見違えるほど安定したものだった。
「AKB48のライバルはAKB48」だとして、「私たちが最も今越えないといけない目の前にある大きな壁は、今までのAKB48なのではないか」などと述べ、「次の10年」に向けた決意表明をしながら支援を訴えた。
「ここで皆さんと約束をしたら、それに向かって頑張れる。これから10年後、皆さんがこのグループをずっと応援していて良かったなと思えるようなグループでいられるように、私たちみんなメンバーで力を合わせて頑張っていきたい。だから皆さんにお願いします。これからもAKB48グループの応援をしてください。皆さん、私たちのことを支えてください」
「私たちは本当にまだまだ未熟で、先輩たちの力を借りてしか歩むことはできないが、ファンの皆さんと一緒なら、この先10年、また夢を見続けられる」
「今日はちゃんとしないと、たかみなさん、卒業をやめないといけなくなる」
このスピーチを聞いて高橋さんが漏らした感想が「人はどんどん成長していく」。終演間際にも、
「私、感動したんだよ。よくしゃべれた。よく頑張った」
「未来のAKB48を横山由依に託せると確信した」
と横山さんにねぎらいの言葉をかけた。
この言葉に横山さんは
「今日はちゃんとしないと、たかみなさん、卒業をやめないといけなくなるかなと思ったから...。だから安心して卒業してください、3月ですけどね!」
と笑顔で応じていた。終演後の囲み取材では、スピーチの内容をまとめた経緯を「自分の思いを整理することがすごく大事」と明かした。
「この1年、沢山のところでスピーチさせていただく機会があり、なかなか思いを伝えるのは難しいことが分かった。あらかじめ自分の思いを整理することがすごく大事だと思って、この1年で考えた思いと(12月)6日に(行われた10周年記念イベントで『先輩たちは本当に素晴らしい』と)思ったことを織り交ぜて、この2日間でまとめた」
10周年記念公演を含めると、この10年で行われた公演回数は「バイトAKB」などの特別企画を除いて3871回、ステージに立ったメンバーは252人、観客数は106万3696人にのぼる。記念公演では現役メンバー119人に加えて中盤から大島優子さん(27)ら卒業メンバー7人が加わり、全25曲を2時間半にわたって披露した。