タクシー運転手の高齢化が進んでいる。「たまに『運転代わりましょうか?』って言いたくなる」といった声がネット上ではあふれている。2014年の平均年齢は58.6歳で、全産業平均を10歳以上も上回っているうえ、明らかに70歳以上のドライバーも目立つ。
高齢化が事故増加に直結するわけではないが、自動車事故の件数全体が減少する中、タクシー業界の事故減少率は平均より10ポイントも低い。このままで大丈夫なのか。
定時制乗務員は35%が70歳以上
「タクシー乗る時、順番で来たタクシーの運転手が高齢者ドライバーだった場合、イヤって言えるのか。やっぱり70歳超えてるドライバーとか怖い」
「高齢の運転手よく見るけどタクシー運転手には定年退職とかないの?」
ツイッターなどネットには、高齢のタクシー運転手に関する書き込みがたくさんある。
実際に、運転手の高齢化は進んでいる。厚生労働者の調査では、2012年が57.6歳、13年が58.3歳、14年が58.6歳で毎年少しずつ平均年齢は上がっている。14年の全産業平均42.9歳(男性)と比べると、いかにタクシー運転手が高齢なのかが分かる。運転手の数は減少傾向とされ、高齢層の比重が高まることになる。
もちろん、タクシー運転手に定年はある。しかし、会社によっては定年後も週40時間以内で勤務する「定時制乗務員」という形で雇用され、運転手を続けることができる。全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の調査では、すでに運転手全体の20%近くが定時制乗務員だ。2013年に定時制乗務員のうち70歳以上だったのは27.9%だが、15年では35.3%にまで増加している。
なかなか引退しない個人タクシー
個人タクシーが平均年齢を押し上げている可能性もある。現行ルールでは75歳になれば事業許可は更新できなくなる。しかし2002年2月1日以前に個人タクシーになっていた場合は、75歳ルールが適用されない。
地域によっては台数制限があるため、高齢ドライバーが引退しない限りは、なかなか若い人に新規の事業許可が回ってこないのだ。
高齢化で気になるのは、安全面だ。
近年、交通事故そのものは減少傾向だ。しかし、国土交通省のまとめでは、交通事故の総数は2002年93万6721件から11年69万1937件で73.9%に減っているのに対し、タクシーの事故は02年2万5970件から11年2万1616件で83.2%にしかなっていない。タクシーの事故減少率は、事故全体に比べて緩やかだ。
もちろん、タクシー各社は安全運転のため取り組みを進めている。全タク連によると、各社は高齢ドライバーに対し、勤務時間を短くしたり、夜は早めに上がれるようにしたり、柔軟に対応しているという。