自分は幸せだと強く感じる人ほど、右脳の特定の場所の体積が大きいことを京都大学医学研究科の佐藤弥准教授の研究チームが突き止めて、英国科学誌「サイエンティフィック・リポート」の2015年11月20日号に発表した。
主観的な幸福感を脳の構造との関係で立証したのは世界で初めてだという。
脳の頭頂部の内側にある「楔前部」の体積が大きい
研究チームは、心理学の様々なテストで「幸福感」を数値化できることを応用。10~30歳代の男女51人(平均年齢22.5歳)に、「生きるうえで目標はあるか」「同世代に比べて幸せだと思うか」など心理学の幸福度調査の質問用紙を使って尋ねて回答を数値化した。そして、回答内容と、磁気共鳴画像装置(MRI)で測定した脳の各部位の体積との関連を調べた。
その結果、幸福感の数値の高い人ほど右脳の頭頂部の内側にある「楔前部」(けつぜんぶ)の体積が大きく、幸福感の数値の低い人ほど小さいことが分かった。また、心理学の「快感」「不快感」「人生の意味意識」の強度を調べるテストも使って質問、回答を数値化すると、同じく楔前部の大きさと関連していた。つまり、ポジティブな感情(快感)が強く、ネガティブな感情(不快感)が弱く、人生の意味を見出しやすい前向きな人ほど楔前部が大きかった。
科学の力で幸せになれるプログラムも
今回の結果について佐藤准教授はこうコメントしている。
「幸せの意味は、古代の哲学者以来考えられてきましたが、脳科学の視点で幸福の一端を解明することができました。過去に瞑想トレーニングで楔前部が大きくなるという研究も報告されています。科学的なデータで幸福増進プログラムを作ることができるでしょう」