東名高速道路と並行する「新東名高速道路」の浜松いなさ(浜松市)-豊田東(愛知県豊田市)両ジャンクション(JCT)間約55キロが2016年2月に開通する。中日本高速道路(名古屋市)が2015年11月19日に発表した。これにより新東名は、御殿場JCT(静岡県御殿場市)から西端の豊田東JCTまで約200キロがつながる。
残るは海老名南JCT(神奈川県海老名市)-御殿場JCT間(約54キロ)で、東京五輪が開催される2020年度までに段階的開通を目指す。新東名による日本の大動脈の「二重化」完了まであと一歩となり、慢性的な渋滞の緩和や災害時のバックアップ機能などが期待されている。
豊田東は三重、岐阜、北陸へのターミナル
豊田東JCTが「新東名の西端」と聞いても、「名古屋までまだかなりあるのではないか」と感じる人がいるかもしれない。確かに、豊田東JCTから名古屋市中心部までは約30キロあり、高速でも30分はみた方がいい。
しかし、豊田東JCTは約2キロ南西の東名高速に豊田JCTで接続した後、名古屋市南部を通って三重県四日市市につながる「伊勢湾岸自動車道」の起点だ。また、北方に向かって土岐JCT(岐阜県土岐市)で中央自動車道に接続し、岐阜県内を横断した後に南下して三重県四日市市に至る「東海環状自動車道」(岐阜-三重間は未開通)の起点でもある。
さらに、この東海環状自動車道は、愛知県一宮市から岐阜県を通って富山県の北陸自動車道につながる「東海北陸道」にも美濃関JCT(岐阜県美濃市、関市)で接続している。豊田東JCTは「ここまで来れば複数のルートで行きたいところに行ける」という高速道路の主要ターミナルのような位置付けなのだ。
現「東名」の渋滞は4分の1以下に?
浜松いなさ-豊田東間の工事は難航した。本来は2015年3月の開通を目指してきたが、工事の途中で重金属を含む土砂の処理や、橋梁の基礎部分の沈下への対応などの難題が発生。このため、中日本高速は2014年7月、開通を2016年3月に1年遅らせると発表した。しかしこれに愛知県はじめ地元が反発したこともあって中日本高速は約300億円を追加投資して、約1か月「前倒し」した経緯がある。
新区間のサービスエリア「ネオパーサ岡崎」には、名古屋で有名なみそかつ店「矢場とん」や地元で人気のベーカリー「パンのトラ」など15店が出店し、ドライバーらをもてなす。また、長篠設楽原パーキングエリアは、「長篠・設楽原の戦い」をコンセプトに外観を本陣に見立てた凝りようで、火縄銃の展示などもある。
今回の開通によって、3時間程度かかっていた東名高速経由の御殿場JCT-豊田JCT間は、新東名を利用することで1時間程度短縮できるという。
これにより東名高速側では渋滞が緩和される。これまで、豊田JCT-三ケ日JCT(浜松市)は年間600回程度の渋滞(時速40キロ以下の状態が1キロ以上かつ15分以上)が発生する区間だったが、通行の分散が図られることで渋滞の発生回数は4分の1以下に減ると見込まれ、事故の減少にもつながることも期待される。新区間周辺にはトヨタ自動車やスズキなどがグループを含めた工場を数多く立地しており、物流のスピードアップで生産効率化につながりそうだ。
全線開通で東日本から中部圏がつながる
残る御殿場-海老名南間は、海老名南-厚木南(2キロ)が2016年度、厚木南―伊勢原北(7キロ)が2018年度に開通。伊勢原北-秦野(13キロ)と秦野-御殿場(32キロ)が2020年度に完成し、全線開通となる見込みだ。
新東名全線開通によって、東京-名古屋間のダブルネットワークが完成する。東名の御殿場、清水、三ケ日各JCTから新東名に乗り入れることができるため、通行車は渋滞回避などのために2つの高速道路を選びながら走れる。「二重化」によって文字通り首都圏と名古屋圏を結ぶ大動脈ができるわけだ。
首都圏では「圏央道」の埼玉県部分が2015年10月31日に開通し、東名高速から中央、関越、東北の各自動車道に接続した。この結果、東名高速から東北自動車まで圏央道経由で、約75分でつながり、首都高速経由の約130分から大幅に短縮された。新東名の全線開通は東日本から中部圏をつなぐ高速道路網にとっても大きな意味を持つものとなりそうだ。