居酒屋チェーン大手の「和民」などを展開する「ワタミ」の創業者で参議院議員の渡邉美樹氏が、インターネットで失笑を買っている。
ワタミの2015年9月中間連結決算によると、最終損益は20億円の赤字(前年同期41億円の赤字)となり、中間決算で2年連続の最終赤字を計上。「ブラック企業」の悪いイメージから客離れに歯止めがかからない状況が続き、厳しい経営が続いている。
20億円の最終赤字 客離れに歯止めがかからず
ワタミの2015年9月中間決算の売上高は、国内外食部門の不振が響き、前年同期と比べて10.3%減の696億円に落ち込んだ。営業損益は14億円の赤字で、前年同期から赤字幅が4億円も拡大した。業績改善に向けて、同社は財務基盤強化を狙いに介護事業を損保ジャパン日本興亜に売却。それにより、16年3月期には最終損益で130億円の黒字を確保できる見通しで、どうにか3年連続の赤字を回避するという。
清水邦晃社長は11月11日の決算会見で、従来の「和民」や「わたみん家」など約500か店のうち、収益改善の兆しがみえない約3割の店舗は「ワタミ」の看板にこだわらないと強調。地域の食材を売りにした地域密着型の店舗や専門メニュー型の店舗などの「新業態」に切り替えるという。また、訪日外国人の集客にも力を入れるほか、高齢者施設向けの食品宅配事業に注力する考えも示した。
そうした中で、ワタミの経営から離れ、参議院議員となっている創業者の渡邉美樹氏が週刊ダイヤモンドのインタビューに答えた。2015年12月7日付のダイヤモンド・オンラインが「『かつての和民は強すぎた』創業者・渡邉美樹氏激白!」の見出しで報じている。
ワタミの業績不振について、渡邉氏は「和民のような総合居酒屋の役割は終わっている地域があったのに、(過去に)強かったゆえに離れ切れなかった。これが外食の赤字を生んだ本当の原因だと思います」と分析。3割の店舗から「和民」の屋号を外す、現経営陣の再生プランには「私は大変いいと思います」と話した。
「僕が創業した30年前とは時代が変わりました」と、チェーンストア理論の時代は終わったとみているようで、「今のお客さまは、均一化された280円の物より380円でいいから、そこにしかない物が食べたい。お金の使い方や価値観が変わった」という。
ただ、「新業態」への転換に期待を寄せる一方、渡邉氏が育ててきた介護事業を売却したことには、介護ビジネスの将来性を高く評価していることに加えて、「私にとって介護は単なる事業ではなく、ライフワークだったので非常に残念です」と語った。
渡邉氏の目には現経営陣は腰が据わっていないと感じたのかもしれない。
「ワタミは僕の子供そのもの」
ワタミが業績悪化で苦しむなか、渡邉美樹氏が経営に戻るつもりはないのか、は気になるところ。その問いに、渡邉氏は「まったくありません」ときっぱり。そして、自身とワタミとの「距離感」を、こう例えている。
「ワタミは僕の子供そのもの。命を懸けてつくってきた会社だからかわいいですよ。でも、子供は自分の所有物ではないですよね。現経営陣が困ったり、迷えば相談に来ます。親として相談に乗り、見守る。ただ万が一、どうしようもない状況になったら、すべてを捨てて戻ります」と語った。
「どうしようもない状況」というのがいつなのかは不明だが、「100%」戻るつもりがないわけではないようにも思える。そのうえで、「確かに、僕が経営していたら、こんなことにならなかったとは思います」とも述懐している。
こうした渡邉氏に、インターネットでは、
「俺が社長ならこんな事にはなってなかったって... ドアホだわwww」
「まったく懲りない、悪びれない。天狗の極みだなこの人(笑)」
「こいつ、何もわかってない! 沈みゆく船から船長が真っ先に逃げ出しといて俺がやってたらって、どの口が言うのか」
「自分が悪いと言いつつ自分は悪くないと言っているわけね」
「現経営陣はなぜ怒らんの? 責任を押し付けられてんのに」
など、渡邉氏への痛烈な批判が相次ぎ、失笑も漏れるありさま。
その半面、
「これが日本の上場企業だと思うと悲しいよ。現経営陣が親離れできていないってことかね?」
と、現経営陣への不満の声もみられる。
2016年でワタミは株式の店頭公開から20年を迎える。渡邉氏は2015年11月25日付のフェイスブックで「20才に喩えるとまだまだ心配とも、これから無限の可能性があるとも言える年齢です。今の私はワタミに無限の可能性あると心から、そう思っています」と綴っている。