「おせち文化を若者に継承したい」という想い
楽天市場に参入した当初は結婚式の料理の取り扱いがメインだったが、売り上げゼロの日が続くなど苦戦を強いられた。そこでおせちを試しに90セット販売したところ、1週間で完売。手ごたえを感じた久松は、05年には思い切って2500セット分を用意。なんと、瞬く間に完売となった。これをきっかけに「ネットおせちには需要がある」と確信し、本腰を入れるようになった。
食材の質を上げるだけでなく、家族の年末の過ごし方の変化に伴って、2人用の小さなおせちや6~7人前の特大サイズ、おせちを味見したい人向けの「おためしおせち」、半分は自分で好きなものを詰められる「ハーフメイドおせち」など、消費者のニーズに沿った柔軟な商品展開を続けている。
おせち文化を若い世代に継承していくことを目指したユニークな取り組みも行っている。例えば楽天市場の店舗運営ノウハウを高校生向けにアレンジして電子商取引授業を行う「楽天IT学校」の企画として、福岡県大和青藍高等学校の生徒と共同でおせちをプロデュースした。
授業はチームごとに使用する食材の試食選択から販売ページの制作まで一通り商品企画を体験してもらい、出来上がった商品を実際にネット販売するというもの。それぞれのチームの売り上げ、商品ページのアクセス数などを分析しながら改善を加えていき、ネット販売の仕組み全体を実践的に学んでいく。結果、高校生プロデュースのおせちは楽天のデイリーランキングにも入った。
企画を振り返り、おせちの販売と真剣に向き合う姿勢や、伝統的な食材をバランスよく組み合わせる努力、問題点への取り組み方など、高校生ながらに全力で取り組む姿に学ぶ点が多かったという。今後も若者におせち文化を伝える機会を増やしていく方針だ。
久松は「2016年新春おせち特集」を行っており、その中で高校生がプロデュースした5種類のおせちも販売している。