愛知県常滑市の中部国際空港近くで、ガソリンの安売り競争が激化している。驚くことに、その価格は1リットルあたり85~87円。ガソリン価格の全国平均(129.1円、2015年11月30日時点)を約45円も下回っている。
コストコが運営するガソリンスタンドと、「地域一番の安さ」をうたう地元のガソリンスタンドの2か店が競い合っている。
瞬く間に20円も値下がり
安売り競争の火付け役は、2015年11月18日に「地域最安値」をキャッチフレーズにオープンしたコストコホールセール・ジャパンが運営する「コストコ中部空港倉庫店」のガソリンスタンド(GS)。レギュラーガソリン1リットルあたり115円で売り出したところ、その前日まで117円で販売していた近く、石油販売業のバロン・パークが運営するGS「ユニーオイル常滑りんくうSS」が対抗して値下げに踏み切った。
翌19日にはいずれも100円を下回り、一時はコストコが87円、ユニーオイルが85.5円にまで下がった。愛知県のガソリン価格の平均は、126.6円。全国平均よりも2.5円安いが、それをさらに下回る過当競争に陥った。
こうした事態にインターネットでは、
「コストコのガソリン安すぎわろた」
「なにこれ。ガソリン1L=87円って、どっから持ってくればこんな値段になるんだ?」
「っていうか、常滑だけおかしい。常滑価格かwww」
「ガソリンが一番安かった時期でも見たことないわ......」
と、消費者らから驚きと歓迎の声が相次いでいる。
一方、競合するGSからは「このままでは店が潰される」と悲鳴があがっている。
そうしたなか、愛知県内のGSでつくる愛知県石油商業組合は「競争が激しくなり、毎日のように値下がりしました。とても採算がとれる水準とは思えません」と話し、両店のガソリン価格が100円を割った19日以降から、5回にわたって公正取引委員会に調査を申し入れた。
それでなくても、ガソリン価格にはガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)が含まれる。28.7円の本則税率と25.1円の暫定税率で構成。それぞれ固定額が課せられるため、安売りするほど税率は上がる。これに、さらに消費税がかかるのだ。
たとえば、1リットル85円のガソリン価格の場合、このうち62.64円分が税金。税率で73.7%にものぼり、残りの22円36円が本体価格になる。
どのGSも人件費や光熱費などで採算ギリギリ。「85~87円」という価格水準では、一般のGSは到底太刀打ちできないというわけだ。
コストコのガソリン価格は山形県でも安かった
こうした激しい価格競争に伴い、公正取引委員会は「コストコ中部空港倉庫店GS」と「ユニーオイル常滑りんくうSS」に、独占禁止法違反の疑いで調査をはじめた。仕入れ値を下回る価格水準を提示するなど、行き過ぎた安売り販売で周辺にある他のGSの価格形成を歪めた、「不当廉売」の疑いがあるとみている。
これに対して、インターネットでは
「他店は一種の価格カルテルじゃねえかよ」
「本当はもっと安くできんじゃねぇ。それがわかるのが嫌なんだろ」
「公取委が圧力かよ。自由競争を阻害してるよな」
「原価割れしてなければ安売りしてもダンピングにはならないはずでは...」
「公取委が日本の経済成長止めてるんじゃないの」
といった、公取委への批判の声が寄せられている。
調査について、公取委は「公表することがあれば審査終了後に行います」とだけ話している。
とはいえ、コストコはどうして100円を割るほどの安いガソリン価格を提示できるのだろうか。
インターネットでも、
「恐るべしコストコwww 仕入れから20円も安いってどっから取ってるんだろ」
といった声が寄せられており、不思議に思っている人は少なくないようだ。
コストコが展開するGSは、2015年8月の山形県の「かみのやま倉庫店」が第1号で、富山県の「射水倉庫店」、岐阜県の「岐阜羽島倉庫店」と出店。愛知県の「中部空港倉庫店」は4か店目だ。
いずれも日本で初めての会員制GSなので、利用するにはまず、年会費4000円(税別)を支払ってコストコの会員になる必要がある。会員はGSの利用のほか、買い物もできる。が、この年会費分を「ガソリン代の先取り」とみなすことはできるかもしれない。
ちなみに、山形県「かみのやま倉庫店」のレギュラーガソリン価格は12月3日時点で1リットルあたり115円(税込み)。山形県の平均価格(132.0円)より、17円も安い。
消費者にとって、オトクな価格であることは間違いないようだ。