ブルガリア出身作家の暗殺にも使われる
リシンはトウゴマの種から「ひまし油」を取り除いた絞りかすに含まれ、わずか0.15ミリグラムほどの量で体重50キロの人間を死亡させる猛毒だ。その毒性は青酸カリをはるかにしのぐと言われる。
リシンは過去にもしばしば暗殺やテロ事件に用いられてきた。
摂取後10時間ほどは中毒症状が現れず、解毒剤もないため、犯行がばれにくい。比較的よく知られているのは、ブルガリア出身の作家・ゲオルギー・マルコフ氏のケースだろう。1978年、イギリスのロンドンでバスを待っている途中、何者かに襲撃され、リシンを含んだ弾丸が命中した。そのまま数時間後に体調を崩すと、3日後に入院先の病院で亡くなった。マルコフ氏がブルガリアからの亡命者だった関係で、ブルガリア政府や旧ソビエト連邦の関与が疑われたものの、実行犯は捕まっていない。
2013年にはオバマ大統領やニューヨークのブルームバーグ市長あてに相次いでリシンの入った封書が届き、米女優など複数人が逮捕された。