ウエストより7.5センチ細いサイズがアブナイ
この症例発表の数日後、英紙デイリー・メールが、スキニージーンズによって深刻な膀胱炎になった31歳の女性のケースを報道した。3児の母である彼女はある朝、ベッドの上で激しい腹痛に襲われ、のたうち回った。「もしかして、また妊娠?」と思い、近くのクリニックで診察を受けると、医師から「膀胱炎です。原因は、そのスキニージーンズです」とサラリと告げられ、驚いた。
医師の説明によると、きついジーンズを履くことによって下半身の通気性が悪くなるうえ、締め付けられるので、膀胱部分が圧縮されて温まる。膀胱内の雑菌が勢いよく繁殖して炎症を起こしたという。
実は、細いジーンズの健康被害は20年以上前から報告されていた。1993年、米国のオクタビオ・ベッサ医師が「タイトパンツ症候群」と名付けて、米内科医学誌に発表、危険性を指摘した。ベッサ医師は「自分のウエストサイズより、7.5センチ以上細いサイズのパンツを履く人はあぶない」として、タイトパンツ症候群の症状をこう説明している。
(1)お腹やお尻、足の付け根を締め付けるためにリンパと静脈が圧迫される。血液や水分が滞り、冷え性になったり、むくみやすくなったりする。
(2)下半身のきつい締め付けにより、胃が圧迫されて胃酸が食道に逆流する。このため胸焼けを起こし、逆流性食道炎を起こす危険がある。
(3)お腹の圧迫で内臓の血行が悪くなり、腸の機能が低下し便秘が悪化する。
(4)肌に密着した衣服を長時間着用すると、肌が汗で蒸れたり、かぶれたりする。デリケートゾーンにかゆみやできものが生じやすい。
特に、ベッサ医師がいちばん強調している危険性は、次の症状だ。
(5)太ももにぴったりフィットするパンツは、大腿骨を締め付けて神経を圧迫する。最初は太ももがピリピリと感じ、焼けるような感覚を覚えるが、やがて太ももの内側の広い部分にしびれや痛みを生じるようになる。これは「知覚異常性大腿神経痛」という病気で、きついコルセットを着用した近世の貴婦人に多くみられた症状だ。悪化すると歩行困難に陥り、治療に数か月かかったり、手術が必要だったりする場合もある。