英国のキャサリン妃が愛用していることで世界的に大流行しているスキニージーンズ。ぴったり足にフィットした人気のアイテムを着こなしている人を見ると、思わず見惚れてしまうが、実は恐ろしい健康被害の心配があるのだ。
そもそも「スキニー」(skinny)という言葉は、直訳すると「やせこけた」「骨と皮ばかりの」という意味に使われる。「ほっそりとした」「すらりとした」という魅力的な外見を表す「スリム」(slim)や「スレンダー」(slender)に比べると、否定的なニュアンスが強い。
血管が圧迫され、あわや下半身まひの報告
それだけでもちょっと怖いが、2015年6月、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。オーストラリアのアデレード大学ロイヤル・アデレード病院のトーマス・キンバー医師らが、スキニージーンズによって、あわや一生下半身まひの障害を負いそうになった女性の症例を英国の医学誌「JNNP」に発表したのだ。
それによると、歩行困難になった35歳の女性が救急車で搬送されてきた。彼女は、親戚の引っ越しを手伝い、食器棚を整理する作業のため何時間もしゃがみこんだ。細身のスキニージーンズを履いており、次第に不快感が増したという。その後、歩いて自宅に帰る途中に足の感覚を失い、倒れたまま数時間動けなくなり、通行人に発見されて病院に運ばれた。来院時、ふくらはぎがあまりにも腫れあがっていたため、ジーンズを切断しなければならなかった。
キンバー医師は論文の中でこう報告している。
「女性の筋肉や神経は著しく損傷して血流が滞っていました。重篤なコンパーメント症候群の症状を示していたため緊急治療を行い、危機を脱しましたが、歩けるようになるまで4日かかりました」
「コンパーメント(筋区画)症候群」とは、ラグビーやボクシングなどの激しいスポーツや交通事故などで強い打撃を受けた時に起こる症状だ。筋肉組織が腫れて中の細胞や神経、血管が圧迫され、組織が損傷するばかりか、壊死(えし)する場合もある。壊死した組織を治すのは難しく、障害が一生残る可能性がある。発見が遅れれば、この35歳の女性は下半身まひの危険性があったのだ。