マラリアを媒介する蚊の遺伝子を組み替え、病原の寄生虫を阻止する遺伝子を子孫に伝える実験に成功したと、米カリフォルニア大学のアンソニー・ジェームズ教授らの研究チームが発表、2015年11月23日付米科学アカデミー紀要「PNAS」に論文を掲載した。
マラリアは現在も世界100か国以上で年間3~5億人がかかり、200万人が死亡する「人類最悪の感染症」だ。死者のほとんどが乳児や妊婦で、その撲滅に道を開くと期待されている。
マラリアを運ぶ蚊に取って代わる、阻止する新種の蚊
マラリアは、熱帯に生息する「マラリア原虫」が媒介役の蚊の体内に入り、その蚊が人間の血を吸う時に人間に寄生し発症する。マラリア原虫を媒介するのは「ハマダラカ」だが、ここ数年の研究で、ハマダラカのDNAにマラリア原虫を寄せ付けない遺伝子を挿入することに成功した。ただ、その蚊は1代限りで死に、繁殖には成功していなかった。繁殖に成功すれば、マラリア原虫を受け付けない蚊が増えて、媒介する蚊に取って代わり、撲滅することができる。
研究チームは「クリスパー」と呼ばれる特殊な遺伝子編集技術を使い、蚊の繁殖に成功、子孫にマラリア原虫を阻止する遺伝子を99.5%の確率で伝えていることを確かめた。ジェームズ教授は、「今回の成果は、この技術がマラリア撲滅のために使えるという現実的な見通しを開くものです」と語っている。