品質コンセプトはそのままでエビデンスを積み重ねてきた
グリナに含まれるグリシンは、ホタテをはじめ魚介類に多く含まれる。深睡眠を速やかにもたらす用途としてのグリシンの活用は、味の素が特許を取得した。その効果の発見過程は、ちょっとユニークだ。
アミノ酸に関するある臨床試験に、同社の研究員が被験者として参加していた。朝と夜に服用すべきアミノ酸を飲み忘れ、夜に2回分飲んで寝たところ、就寝中のいびきがなくなって翌朝の目覚めが壮快だったという。実は研究員が飲んでいたのは、「対照食」(実際に調べたい成分とは別の成分が入ったもの)として与えられたグリシンだったのだ。研究員本人が検証を続けたところ、グリシンの服用を繰り返すと、熟睡した感覚や疲労感の軽減について再現性があり、グリシンの眠りの効果への可能性について本格的な研究に入ったのだという。
当初は、どんな指標を用いて「睡眠の質が向上した」と判断するかをはじめ、確証ある臨床データを得るための試験の手法づくりから始めたそうだ。大学や専門医の知恵を借りて試行錯誤しながら、例えば就寝中の脳波を測定して波長を調べたり、被験者にアンケートを実施して「目覚めた時の感覚」を聞いたりした。最初の「発見」から3年後の2005年、グリナが誕生。「眠りをテーマにした食品は、味の素でも初めてでした」(前出の斉藤さん)。
発売後、7300万食以上が販売されて「十分な食経験」があることから、消費者庁に機能性表示食品として届けを出し、受理された。品質コンセプトは過去10年間、大きく変わっていないが、エビデンス(科学的根拠)を積み重ねてきたことで消費者にどんなメリットを提供できるかを詳しく説明できるようになった。現在は通信販売のみの取り扱いで、パッケージの側面にグリシンが深睡眠をもたらす旨の「届出表示」の内容が記載されている。
斉藤さん自身、出張時など睡眠時間が少ないときや、翌日が休みで「ぐっすり眠りたい」というときにグリナを服用しているという。「睡眠の質が向上すれば、生活の質にも好影響をもたらします。お客様からは『ぐっすり眠れるようになった』との声をいただいています」。