大学生の就職活動の一環として定着してきたインターンシップをめぐり、ライフネット生命保険の岩瀬大輔社長が、受け入れた学生に名刺のExcel入力を任せたら2週間ほどで辞めてしまったというエピソードを明かした。
岩瀬社長といえば、東大在学中に司法試験に合格。ハーバード・ビジネス・スクール卒業後、ボストンコンサルティンググループ、リップルウッドを経て同社の立ち上げから参加した、若きエリート経営者だ。そんな岩瀬社長の発言に、インターネットでは賛否双方の声が寄せられている。
「単純作業でも楽しめるはず」
岩瀬社長の発言によると、「ドアの前で待ち伏せされるぐらい」熱心な学生がインターンシップを希望したため受け入れ、仕事として自身の持っている顧客や知りあいの名刺を全部Excelに入力するよう命じた。ところが、学生は2週間経った頃に辞めたいと言ってきた。「自分はマーケティングとかそういう仕事をしたかった」のに、名刺の入力ばかりをやらされたという。
岩瀬社長としては、名刺には取引先や顧客の情報が詰まっているので、「たとえば地域別と業種別に分けたりすれば、単純作業でも楽しめるはず」と考えていたようで、「面白い仕事なんてないんですね。ただ自分で工夫して面白くできるかどうかだと思います」と綴った。これが物議を呼んだ。
ライフネット生命によると、同社のインターンシップは現在ホームページやフェイスブックを通じて公式に募集している。「入口で待ち伏せされても応じることはありません。そもそも、これ(岩瀬社長の発言)は2007年の準備会社の頃のことで、あくまで考え方の一端を示したものだと思います。それが今になって取り上げられたのかは、よくわかりません」と話す。
とはいえ、インターネットではバイラルメディアのnetgeekが2015年11月29日付で取り上げ、「結果が出せなかったという意味では完全に仕事の振り方を間違えた岩瀬社長のミスだと言わざるを得ない。それにもかかわらず、岩瀬社長はみじんも自分に責任があったとは考えずに学生が悪いと決めつけている」と、痛烈に批判した。
これに同調する声は少なからずあり、
「大学生にそこまで要求するのは、いささか酷です。単純作業に面白みを見いだせる人は少ないのではないでしょうか」
「インターンは無給だし、そこがダメなら他社に行かないと。就活は限られた期間でしかできないからな」
「なんだか相変わらずの『上から目線』ですね。自分の学生時代を思い出してよ」
といった具合だ。
ホリエモン「マジうぜえ。俺だったら、無視だな」
一方、ライフネット生命の岩瀬社長を支持する声も多い。インターネットには、
「これは岩瀬社長が正しいでしょ。バッシングの意味がわからない」
「待ち伏せするくらいヤル気ある学生なんだからと期待したんだろう。単純作業とはいえ取引先や顧客の名刺は企業機密と言っていいもの。別にブラックでも何でもないと思う」
「突然来た見ず知らずの学生に重要な仕事などさせるわけない。仕事をやっただけでも褒めるべきで、折角できかかった人脈をダメにした学生が愚かだ」
といった声が寄せられている。
また、ライブドア元社長で著述家の堀江貴文氏も、
「出待ちとかマジうぜえ。中に入れてくれただけでも御の字だろ。俺だったら無視だな」
とつぶやいている。
インターンシップに取り組む企業は年々増えている。就活に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司氏によると、インターシップの内容は企業によって異なるが、業界動向や仕事の説明、社員の作業補助、プログラムなどの入力作業にビジネスゲームやグループワーク、なかには模擬面接や社員との懇親会まで用意しているという。
その一方で、「ただ働き」や「名ばかりインターン」といわれる企業側の「悪用」が社会問題化。たとえば、アルバイトと同じ業務であったにもかかわらず、インターンシップを理由に「無給」で働かせるケースが起っている。
岩瀬社長の発言について、石渡氏は「インターンシップの多くが1~2日の日程なので、2週間は長いほうですね。たしかに『雑用しかやらせてもらえない』と感じる学生はいるでしょう。しかし、企業も通常業務の中で人材や時間を割いているのですから、学生側はその点は考えないと。まして、このケースは学生も『押しかけ』なのですから、たとえ雑用でも文句は言えないですし、2週間も名刺の入力をしていたのであれば、そこからマーケティングできるものがあったはずです」とみている。