NTTドコモがスマートフォン向け有料放送「NOTTV」を終了すると発表し、関係者や有識者からは「やっぱり」「予言したとおり」という声が上がっている。
同社の執行役員を務めていた夏野剛さんは「こんなものどう考えたって上手くいくわけないでしょう、と主張した」と経緯を振り返る。さらに「当時のドコモの経営者の責任は、誰も問わない」と指摘した。
目標会員数は600万人、実際は150万人止まり
ドコモの子会社「mmbi」が運営を担い、「日本初スマホ向け放送局」をうたったNOTTVは2012年4月に開局。ドコモのスマホやタブレットを対象に、独自に製作したドラマやバラエティー、CS放送の各チャンネルを月額400円から提供していた。
しかし2015年11月27日、「当初想定していた会員数の獲得に至らず、今後の事業継続が困難な見込みであることからNOTTVサービスを終了することといたしました」と発表した。2016年6月30日に終了する。
同社が認めているように、撤退には会員数の伸び悩みが大きく影響した。目標では15年度で600万人の契約者を見込んでいたが、実際には15年3月末の時点で175万人。9月末には154万人にまで減っていた。15年3月期は503億円の純損失を出し、開局以来3年連続の赤字だった。
なぜ会員数が増えなかったのか。そもそもNOTTVはドコモの端末でしか見られないし、首都圏や東海、関西など視聴エリアも限られている。ドコモのiPhoneでもチューナーが必要だ。Hulu(フールー)やNetflix(ネットフリックス)など海外動画サイトの日本上陸も影響した。
会議は多数決でもなく社長裁定だった
多くの識者は、NOTTVの失敗を「予想通り」として受け止めているようだ。
山田肇東洋大教授は11月28日、ハフィントンポストへの寄稿で「やっぱりNOTTVは失敗だった」「ビジネスモデルは古臭く、スマートフォン全盛の今には合わなかったのだ」と指摘した。山田氏は2014年3月にも会員数の伸び悩みについて、
「NOTTV対応のスマートフォンだけで視聴可能、逆に言えば、無線回路が対応しないiPhoneなどでは視聴できないという専用性が苦戦の理由である」
と分析。コンテンツ提供に専念したほうが会員数の増加が期待できるとしていた。
当時、ドコモの執行役員だった夏野剛さんは11月29日にツイッターで、
「こんなものどう考えたって上手くいくわけないでしょう、と主張したが、聞きいられなかった。会議は多数決でもなく社長裁定だったから。まさに暖簾に腕押し。無力さ感じたなあ」
と振り返る。28日には「こんなものを作った総務省と、それをまま受け入れた当時のドコモの経営者の責任は誰も問わない」(原文ママ)とも書いている。
同様に経営陣の責任については池田信夫氏も11月28日にツイッターで、
「最初からつぶれるとわかっていたNOTTVを、なぜドコモは始めたのか。これはほとんど背任に近い」
と糾弾した。