魚も相手を顔で識別しているという研究を大阪市立大大学院理学研究科の幸田正典教授のグループがまとめ、2015年11月26日付の米科学誌「プロスワン」電子版に発表した。顔でお互いを識別するのは、チンパンジーやカラスなど哺乳類や鳥類では知られていたが、魚類で確認されたのは世界初という。
研究に使われたのはカワスズメ科の熱帯淡水魚「プルチャー」。アフリカの湖に20匹ほどの群れで棲み、社会性が高い。縄張り意識が強く、よそ者が来ると攻撃をしかけるが、体のどの部分を見て「見慣れた魚」と「初めて見る魚」を区別するのか謎だった。
そこで、研究チームはコンピューターを使って「見慣れた魚」と「初めて見る魚」の顔と体の部分を合成、4つの組み合わせの映像を作った。それぞれを水槽の中のテレビ画面で見せると、顔が「見慣れた魚」の場合、体が「見慣れた魚」と「初めて見る魚」のどちらでも警戒するのをすぐやめた。しかし、顔が「初めて見る魚」の場合は、体がどちらでも警戒する態度を続けた。行動を開始するまでの時間は0.5秒で、ほぼ瞬時に相手が誰か見分けているという。
幸田教授はこうコメントしている。
「非常に高い識別能力で、身近にいる魚との無用な争いを避けていると思われます」