カナダ・ブラジルに次いで、中国・ロシアも強敵に
ただ、MRJ初飛行も全日空への初納入に向けた通過点に過ぎない。初納入まで約1年半。今後は、航空当局の審査に合格するために、限られた時間の中で2500時間に及ぶ試験飛行を実施し、約2000項目のチェックをクリアしなければならない。審査に当たる国土交通省もほぼ初めての経験だけに欧米当局から学びながら手探りのような状態だ。
米ボーイングなどの大手メーカーがいないいわば「隙間」の小型機市場を狙っての参入だが、先行するカナダ・ボンバルディア、ブラジル・エンブラエルの2社との受注競争に打ち勝つ必要がある。MRJは両社よりも燃費性能を2割向上させ、客室を広く快適にしたことなどが「売り」だが、2社とも開発中の新型機の性能を上げており、予断を許さない。また、ここへきて中国、ロシアといった新興勢力も本格的に分け入ってくる気配が濃厚だ。MRJは初参入の市場で激しい競争にさらされることになる。
また、国内部品メーカーの裾野を広げるといっても、人材を確保し技術レベルを高めるなど数々の難題をクリアする必要がある。MRJの部品の国産率は3割程度にとどまり、「伸びしろ」があるという期待はあるが、YS11の轍を踏まないためにも、関係者は高度な舵取りを試される局面が続く。