2015年10月に発覚した横浜市都筑区のマンション傾斜問題で、ゼネコン各社が戦々恐々としている。旭化成建材の杭打ち工事データ偽装が業界全体の問題になりつつあり、元請けであるゼネコンの責任を問う声が日増しに高まっているからだ。
東京五輪需要もあって活況な建設市場を冷やしかねないとの恐れも出てきて、ゼネコン各社などで作る日本建設業連合会(日建連)は、これまで各社任せにしてきた杭打ち工事の指針を統一する方針を打ち出すなど、自主的な取り組みをアピールし、対応策に必死だ。
「杭打ち」以外の不正はないのか
「元請けの建設会社として、発注者に対する全責任を負っている」。11月20日の日建連の定例記者会見で、中村満義会長(鹿島会長)は厳しい表情ながら明確にこう語った。データ偽装の直接的な責任は下請け業者にあるとはいえ、それを見過ごした元請け業者の責任こそ大きい、と自ら示した形だ。
日建連は今回の問題に対し、比較的素早い対応を見せてきた。10月21日の記者会見では、旭化成建材が過去に行った杭打ち工事の調査に協力する考えを表明。さらに、再発防止を図るため、杭打ち工事の施工管理体勢や施工記録の点検の基準を明確に示したり、電子データの活用促進などを示したりした、業界の統一指針を年内にも作る方針を示した。この指針に、元請けの責任についても盛り込む方向だ。
今回のデータ偽装は、旭化成建材の首脳陣が早い段階から、特定の現場担当者の責任だと指摘したものの、調査の結果、別の担当者もデータ偽装を行っていたことが発覚。加えて、杭打ち工事大手の「ジャパンパイル」にもデータ偽装があったことがわかり、不正は業界全体に蔓延していたとの状況をうかがわせる。杭打ち以外にも不正が行われているのではないか、と建設業界全体への不信感が強まっているのが実態だ。
「復興」「五輪」の建設需要に沸くさなかに......
建設工事は行程ごとに細分化や専門化が進み、ゼネコンなどの元請け業者の下に、多数の下請け業者が連なる多重構造が出来上がっている。元請けは全体を管理し、杭打ちや内装工事などの施工は下請けが担当する。「元々大手ゼネコンの管理は厳しかったが、多重構造が進むことで、管理が行き届かなくなっている」(業界関係者)と指摘される。ゼネコンに対する責任追及が今後強まっていく可能性は強い。
一方、2020年の東京五輪に加え、東日本大震災の復興需要もあり、建設市場は需要に供給が追いつかない状況だ。国土交通省によると、建設投資額は2010年度には約42兆円だったが、2014年度は約48兆円と2割近く上昇している。
まさに「書入れ時」を迎える中、今回の問題が建設自体の規制強化などにつながれば、ゼネコンへの影響は深刻だ。「自浄能力を打ち出し、問題に積極貢献する姿勢を示さなければ、さらに厳しい状況に置かれる」(業界関係者)との見方も強まる。いかに実効ある取り組みができるか、ゼネコンの本気度が問われている。