東電福島原発、完成直後の「遮水壁」が傾いた 五輪公約「アンダーコントロール」の実態

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   東京電力福島第1原発で、汚染地下水が海へ流出するのを防ぐ「遮水壁」が傾いていることが分かり、東京電力は対応を進めている。

   建屋を囲む凍土壁に続く、汚染水対策をめぐるトラブルだ。安倍晋三首相が2013年9月、五輪招致に際して世界に言い放った「状況はアンダーコントロール」の実態はどうなっているのか。

  • 傾きが判明した海側遮水壁(東京電力提供)
    傾きが判明した海側遮水壁(東京電力提供)
  • 傾きが判明した海側遮水壁(東京電力提供)

地下水の水圧で最大約20センチ

   東電によると、2015年11月25日、福島第1原発の1~4号機の汚染水をせき止める海側遮水壁が、海側に最大で約20センチ傾いているのが判明。地下水の水圧が原因だという。傾きによる、遮水壁の機能に影響はないとした。

   遮水壁は、3年以上かけて10月26日に完成したばかり。鋼管594本を約780メートルにわたって港湾内の岩盤に打ち込んだもので、1日約400トンも海に流れ込んでいた地下水を10トンまで減らせるとしていた。

   完成後の11月6日に廣瀬直己社長が東電サイトで「汚染水対策は大きく前進しました」とコメントしたように、汚染水対策の柱の1つに位置づけられていた。

「凍土壁」はいまだ建設中...

   汚染水対策をめぐるトラブルは、今回が初めてではない。

   海側の遮水壁のほかに、建屋周辺の井戸から地下水をくみ上げて浄化し、港湾内に排水する「サブドレン計画」、土壌を凍らせて地下水の流入を遮断する「凍土壁」がある。

   このうち、凍土壁は当初の運転開始目標だった2015年3月に間に合わず、4月末になってようやく試験凍結が行われた。しかし、周囲に配管があるため凍結が難しい個所があったり、電源ケーブルの故障で冷却器が一時停止したりして、想定外の事態が続いた。今も建設工事が続いている。

   遮水壁も現時点では、効果を「検証中」(東電)の段階で、放射性物質濃度が下がったといったデータはまだない。

   安倍首相は2013年9月、五輪招致をめぐるIOC総会で福島第1原発について「状況はアンダーコントロール(統御できている)」と英語のスピーチを世界に向けて発した。

   しかし、少なくとも汚染水対策については「コントロール」が完全に後手に回っている状況だ。

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