放置した漁網の回収は難しく影響も深刻
「定量的なことは言えませんが、小笠原とだいたい同じくらいの被害だと考えています」
確かに、水産庁がホームページ上で公開した3分強ほどの調査動画を見ると、中国漁船の漁網が散乱している海底は、ほとんどサンゴが見られず、真っ白になっていた。サンゴは、壊滅的な被害ではないというが、成長が遅く乱獲に弱いため、酷い状況には変わりがない。
サンゴが減ってくれば漁業にも悪影響があり、池間漁協の組合長は、「サメ被害もありますが、サンゴに住み着く魚も少なくなっている気がします」と懸念を明かす。
沖縄県の水産課や県内の漁協によると、アカサンゴは水深が数百メートルの深海に見られ、沖縄本島と宮古島の間ぐらいに生息が多い。中国漁船はここに出没を繰り返していたが、放置した漁網の回収は困難だといい、その影響も深刻になっている。
ここでは、沖縄の漁船が高級食材となるハマダイなどの深海魚を獲っている。しかし、釣りの仕掛けが海底の漁網に引っかかったりするほか、「船のアンカーも絡まって、使い物にならなくなる」(池間漁協の組合長)そうだ。
日中間の取り決めで中国のサンゴ漁規制が強まり、14年秋ごろには中国漁船はほとんど見られなくなった。
しかし、1997年に日中漁協協定を結んだことで、沖縄の西側の海域では、中国漁船を取り締まれない状態が続いている。背景には、この海域に尖閣諸島があるため、日本の法令適用を先延ばしにしている事情があるとされている。池間漁協の組合長も、「中国漁船には、もう来てほしくありませんが、入って来る可能性がないとはとても言えないでしょう」と不安げだった。