タモリも「子役に『お疲れさま』と言わせるな」
歴史を紐解くと「ご苦労さま」の方が古くからあるようだ。NHKで大河ドラマなどの時代考証を担当する大森洋平同局ディレクターは自著「考証要集 秘伝! NHK時代考証資料」(文藝春秋 2013年)で、使う範囲が芸能界や花柳界などに限られた「お疲れさま」と違い「ご苦労さま」は身分や立場の上下を問わず使われたと明かす。その上で、「(お疲れさまは)日本の一般的伝統的なねぎらいの言葉ではない」と指摘した。
では、「お疲れさま」がここまで「市民権」を得た理由は何なのか。言語学者の金田一秀穂さんは15年8月3日発売の「週刊ポスト」で「日本語には会った時に目上の人に対してきちっと使える、万能の挨拶語がない」とし、「お疲れ様です」が広がったのは他に適当なあいさつが無かったためだとしている。
双方を分ける明確な基準は今もなく、その使い方は各自の認識に委ねられている。そのためか、前出のビジネスマナーとは逆の立場を示す有名人も。
15年7月26日放送のトーク番組「ヨルタモリ」(フジテレビ系)では司会のタモリさんが「子役が誰彼かまわず『お疲れさまです』といって回るのはおかしい」「『お疲れさま』は元来、目上の者が目下の者にいう言葉」などと語り、民放連は子役に「お疲れさま」と言わせないよう申し入れるべき、などと提言して波紋を呼んだ。