「郵便局で中古車」取り扱いが来年スタート 「農村部の中高年」狙う戦略は成功するか

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   郵政民営化の進展で2016年2月上旬から、郵便局で中古車を買ったり、自分のクルマを売ったりできるようになる。小泉政権下の2005年に始まった郵政民営化作業は、10年の時を経て2015年11月4日、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の郵政グループ3社が東京証券取引所に同時上場し、節目を迎えた。

   しかし、郵便局を運営する日本郵便は、本業の郵便・物流事業が赤字となっているため、事業の多角化を進め、中古車の売買で郵便局の生き残りをかける。

  • 株式上場も果たしたが、郵便局の生き残り策はこれから
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「ガリバー」と業務提携、日本最大の販売網に

   日本郵便の子会社である郵便局物販サービスは、中古車販売大手のガリバーインターナショナルと中古車売買で業務提携した。全国約2万4000の郵便局と全国約480のガリバーの店舗を結び、「今までカーサービスの行き届いていなかった地域のお客さまに全国均一価格の中古車と安心のサービスを提供する」という。ターゲットは農村部などで、近くに中古車屋がないが、生活の足として自動車が欠かせない中高年層を狙っている。

   郵便局物販サービスがコールセンターを設け、郵便局の利用者から買いたい車種などの希望を聞き取り、ガリバーに顧客を紹介する。ガリバーは自社店舗網で補えない地域での集客につなげる。まずは2000局程度で始め、2017年度中に全国の郵便局に広げるという。将来的に年間数千台の取り扱いを見込んでいる。

   郵便局物販サービスは、これまでも全国の農水産物などの特産品を全国の郵便局でカタログ販売してきたが、今度は中古車も加わることになる。中古車の販売網としては、もちろん全国最大となる。

   ガリバーは1994年の創業以来、中古車の信頼性と買い取りビジネスの認知度向上を図るため、中古車の全国均一価格を提示してきた。2008年からは多様な保証制度を設け、中古車に対するユーザーの信頼を得ようとしてきた。さらに、ガリバーは中古車の新たな販売チャンネルを模索しており、サービスの多様化を目指す日本郵便と思惑が一致した。

郵便減って「手数料収入」が頼みの綱

   日本郵便が郵便局で中古車売買などサービスの多様化を進めるには理由がある。日本郵政グループは、上場したゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融2社がグループ全体の利益を支えている。もう一つの子会社である日本郵便は赤字体質を脱却できていない。電子メールの普及で郵便事業は構造的な赤字となっており、宅配便事業もヤマト運輸など強力なライバルが存在する。ゆうパックとペリカン便の経営統合も期待した効果を発揮できなかった。

   一方で、日本郵便にはユニバーサルサービス(週6日、原則1日1回、全国どこでも同一料金で郵便を配達すること)が法律で義務付けられている。地方で過疎化が進む中、郵便局網の維持は経営の重荷となっている。現在はゆうちょ銀行とかんぽ生命から郵便局窓口利用の手数料収入があるが、今回の上場を機に金融2社の完全民営化が進めば、将来的には手数料収入も期待できそうにない。日本郵便としては郵便局窓口を利用して、新たなビジネスを拡大し、手数料収入を稼ぐ必要があるのだ。

   ただ、郵便局でどこまで中古車が売れるかは未知数だ。過疎地ほど中高年層に中古車ニーズがあるのは事実だが、ガリバーとの業務提携が日本郵便の手数料収入拡大の「頼みの綱」になるのかどうか。

   小泉政権時代、「郵政民営化で郵便局がコンビニになる」というキャッチフレーズがあった。郵便局を民営化したらコンビニのようにいろんな商品やサービスを提供できるようになり、過疎化が進む農村の生活も便利になったというイラスト付きの政策集で、2005年の郵政解散・総選挙で自民党が制作した。

   あれから10年。郵便局で中古車まで扱うとは、小泉元首相も思いつかなかった?

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