JR北海道が釧網線の冬季限定の観光列車「流氷ノロッコ号」(知床斜里―網走)の運行を2015年度の冬シーズン限りでやめる検討を始めた。
網走市や斜里町など沿線自治体をJR北海道幹部が訪問して伝えたといい、島田修社長も定例記者会見で「今年度は運行する」としながらも、来年度以降については運行廃止も含めた見直しを検討していることを認めた。
1990年に運行開始、だるまストーブでするめが焼ける
流氷ノロッコ号は客車を引くディーゼル機関車が国鉄時代に製造されたもので、老朽化が進んでおり、順次廃車していく。このため、JR北海道は、これまでのような運行を続けるのは難しいと判断した。
流氷ノロッコ号は1990年から運行を開始した。毎年オホーツク海に流氷が現れる1月末~3月初旬に沿岸を時速約30キロの低速でゆっくり走り、展望車や車窓から流氷や銀世界など北海道の冬景色を一望できるのが売り。車内は番屋風に装飾されており、だるまストーブで車内売店のスルメを焼いて食べられるなど、人気の観光列車となっている。年間2万人が利用し、今シーズンは2016年1月30日から2月28日まで1日2往復を予定している。
網走での砕氷船による流氷観光と流氷ノロッコ号をセットで楽しむ観光客は少なくなく、運行廃止には沿線自治体から反対の声が上がることも予想される。
ネット上でも「寂しい判断だな」「JR北海道、おかしいだろ」「北海道新幹線で観光客増えれば今以上に大事な観光資源になるはず」「観光列車に力を入れるJR九州との差はなんだろ」「乗ってみたかったのに」などと批判的なコメントが圧倒的だ。
慢性赤字に相次ぐトラブル、新幹線費用も追い打ち
一方で、道民からは「観光列車も経費削減の対象になった」「北海道新幹線に費用がかかって苦しいからな」などとJR北海道の窮状を実感しているだけに理解を示す声も聞かれる。
JR北海道は2015年3月期連結決算で本業のもうけを示す営業利益が308億円の赤字(前期286億円の赤字)を記録し、さらに2015年9月中間決算も105億円の赤字(前年同期99億円の赤字)となっている。鉄道事業は慢性的な赤字だが、そこに最近相次いだトラブル対応のための修繕費や北海道新幹線の開業準備費用などが追い打ちをかけた形だ。
こうした状況からJR北海道は2015年9月にディーゼル車で運行する普通列車の約15%を減便することを明らかにし、駅の廃止や無人化も進めるなどコスト削減に努めている。流氷ノロッコ号も人気こそ高いが「経営立て直しには合理化しかなく、赤字を垂れ流す地方路線の廃止は仕方ない」(北海道関係者)との指摘もある。
この冬の「流氷ノロッコ号」が乗り納めとなるのだろうか。