歯周病は糖尿病と並ぶ代表的な生活習慣病だが、両者の関連を裏付ける研究報告は少なかった。2015年11月の日本公衆衛生学会総会で、東京大学大学院公衆衛生学の宮脇敦士教授らのチームが、歯周病になると糖尿病になるリスクが最大で89%高まるという調査成果を報告した。
研究チームは、金融保険系企業の従業員約3万5000人の健康診断記録から、調査開始時点で糖尿病ではなかった26~55歳の男性2507人を選び、5年間にわたって歯周病と糖尿病発症の関連を調べた。
その結果、5年間で2507人中134人が糖尿病を発症したが、歯周病になっていた人は、なっていなかった人に比べて糖尿病になるリスクは28%高かった。中でも41~55歳の壮年層が高く、38%に達した。歯周病の各段階別(口臭・歯肉出血・動揺歯=歯がグラグラ動く)に調べると、一番ひどい「歯がグラグラ動く段階」の症状では、発症リスクは89%にまで高まった。
歯周病は、コレステロールの多い食生活や喫煙、運動不足などが原因で起こり、糖尿病の発症メカニズムとよく似ている。また、歯周病は糖尿病の合併症の1つとして発症する場合が多く、「歯周病になったら糖尿病を疑え」と言われている。今回の調査は、歯周病が糖尿病に発展するリスクを裏付けた形だ。