政府が小型無人機(ドローン)を使った荷物配送を2018年までに実現しようと、制度の整備に向けて動き始めた。安倍晋三首相が2015年11月5日、閣僚と経済団体代表らが意見交換する官民対話の場で、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」と宣言した。
首相は、民間と関係省庁による官民協議会を立ち上げ、2016年夏までに障害となっている規制の見直しなどを進めるよう指示した。
電波法見直しなど規制緩和を検討
さらに、ドローンの商用化に向けて「より遠隔地から操作したり、データをやり取りしたりできるようにする」と電波法見直しにも言及。工事現場で上空から撮影したり、画像を送信したりできるよう、こちらも2016年夏までに使用可能な周波数帯の拡大や出力アップなど新たな電波利用の制度整備を行うことにした。
ドローンによる荷物配送については、海外でアマゾンやグーグルといったIT企業、大手小売のウォルマート、大手国際輸送のDHLなどが実験を進めている。日本でも医薬品の運搬テストなどは行われており、既に農薬散布や災害調査、建設現場などでの活用が広がっている。
政府は2015年4月に首相官邸屋上に落下したドローンが見つかったり、各地で事故やトラブルが相次いだりしたのを受け、同9月に航空法を改正。家屋密集地や空港周辺、夜間の飛行などを原則禁じた。そうした規制をする一方で、荷物配送に向けて規制緩和を進めるのは一見、矛盾するようにも思える。
案の定というべきか、安倍首相がドローンによる荷物配送をぶち上げると、ネット上では「おもしろい。でも、きっと衝突事故や落下事故が起きる」「日本のような宅地環境だと利用が限られる」「運べる荷物の重さが制限される」「そう遠くまで運べない」「電線に引っかかるのが続出だろ」などと懐疑的なコメントが並んだ。
実用化まで安全確保は間に合うか
ただ、政府が現時点で想定しているのは、ネットで心配されているような都市部というより、離島や山間地など僻地での配送だ。医薬品など緊急性の高いものの配送を先行してスタートさせ、そこから高層ビルの工事現場などでの撮影などへと拡大させていくことをイメージしている。
こうしたドローン活用の商用化をめざすためには、法整備や規制緩和とともに、ドローンの安全性能の向上という技術的な課題が大きな壁として立ちはだかる。今以上に速度や積載重量、航続時間などの機能を上げ、自動制御を行うコンピューターの性能も向上させる必要がある。軽くて大容量のバッテリーも必要だ。
まだ安全性に不安が指摘されているだけに、政府内にも「これから3年で実用化できるかは疑問だ」との声もあり、首相の思惑通りにドローン活用が進むかは不透明だ。